白昼斬月　～寝子島辻斬り物語　弐～｜リアクション

白昼斬月　～寝子島辻斬り物語　弐～

【決着、アウトレットモール】

「折り鶴はまだか！」
「無理無理ィ！　超無理！　チョベリバな感じ！」
「日本語で頼む！」
　一方、シーサイドタウンアウトレットモールでは……託志と音羽は窮地に立たされていた。
「うおぉぉぉ！」
　ろっこん【ストレート・キュー】で囮を放ち、託志は斬りかかるも、相手の影人の大物がむぅんと下からキューをすくい上げてそのまま吹き飛ばす。
「な、なんつー馬鹿力……」
　託志としては距離を置いて戦闘をしたかったが、どこに影人が現れるか分からない上に、音羽が居る以上自分が立ちふさがるしかない。
「落ち着いて折るんだ……お嬢ちゃんのところには俺が一人たりとも通さねぇぜ！」
「う、うん」
　不安そうな目をする音羽を励ましながら、必死でキューを振るうも数も実力も劣勢。
（なんとか……なんとか……お嬢ちゃんだけでも逃がしてぇな）
「出来たよ！　超良い感じ！」
「そのまま持っとくんだぜ！　考えがある！」
（２，３匹追ったところで、囮になるか）
　勝つのは無理でも、負けないように立ち回る……これなら、と託志は考える。
「三匹出来た、みたいな！」
「よし……逃げるぞ」
　そのまま音羽を促して後退を始める。
「おっさんはどうする感じ！？」
「俺は『お兄さん』だ！　コンチクショウ！」
　しかし、その言葉が託志に力を与えたように思えた。
「いいか、ここで俺はあいつらを引きつけてから逃げる。誰か呼んできてくれ……現状では無理だしな」
「でも！」
　食い下がる音羽。
「馬鹿野郎！」
「野郎じゃないし、お嬢さんだし！」
「いいから行け！」
　追ってきた大物の影人と対峙しながら、託志は笑ってみせる。
「それがお嬢ちゃんの果たすべき役目だぜ！　急げ！　効果が切れる前に！　ほかの大物のところに誰か居るだろうからそこを目指すんだ！」
　会話しながらも必死で敵を引きつけ続ける。
「……分かったよ、お兄さん。ていうか」
　ちょっと音羽はそこでこらえてから、言う。
「もしかして、名乗らないのがかっこいいと思ってる系ぃ？」
「終わったら教えてやるぜ！　うっし、今だ！　頼んだぜ！」
　影人が集まってきたところを体当たりをするかのように防ぐ。
　その言葉を聞いて、音羽ははじかれたように走り出した。
　振り返ろうと、何度も思いつつ、走った。
　……。
　……。
　数分、託志は戦い続けるもついに相手の影刀がとらえる。
「……ま、ここまで出来れば及第点。か」
　そう言って、消えてしまった。

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