秋風ボートレース！｜リアクション

秋風ボートレース！

　彼らの内側から、先頭を狙うのは……。
「サンマさんだ！」観客の一人が声を上げる。
　サンマさんがクロールで参加している？
　いや違う！　あれは船体の絵。
　刀は船体にサンマさんを描いて参加していた。オールを漕ぐとサンマさんがクロールしているように見える。
　お茶目な様子ながら、操縦者の技量も相まって、刀の船の動向は注目を浴びていた。

　刀も手漕ぎボート。だがその操法は、蛇那伊と真逆。
　全身を小さく縮こまらせ、曲げた膝の屈伸のみでボートを送る。
　バタフライに近いか。
　
　一度漕げば、後はその勢いでボートは進む。
　がむしゃらに漕げば、却って勢いを殺す。
　流れに逆らわず、勢いを活かすタイミングで、一定のリズムを刻む。
　悠揚せまらぬ、落ち着いたペースを作る。
　速度の世界に慣れた刀ならではの、練達の走りだった。

　楽しむように、リラックスするように。
　負けず嫌いな自分はいるが、それでも、勝負を愉しもうとする自分もいる。

　ぐんぐん速度を伸ばす刀。自然でのびやか、美しいフォルムだ。
　たまらず、観客席から歓声があがる。

　それを追うのは修、円のコンビ。抑えた速度。

　豪も同じくペースを抑えつつ、レース全体を視野に入れる。
（天気が崩れる前に、スピードを上げた方が良さそうか……？）