サンマさん、サンマ星に帰る｜リアクション

サンマさん、サンマ星に帰る

●ピエロとボケる少女

「ここは誰！？　私はどこ！？」

　サンマ星に辿り着いた維都月茉菜の第一声はそれだった。

「君は維都月茉菜。ここはサンマ星ってとこらしいよ」

　隣に立つ灯斗南がやれやれといった面持ちで答える。

「自宅で旬のサンマが食べたくなって、『100円ショップで300円で売っていた七輪』と、
　デパートで秋刀魚を買っての帰り道に、急に眩暈がして気がついたら、何だか変なところに来たよ！」

　茉菜は七輪を抱きながら興奮気味だが丁寧に自分の置かれた状況を説明する。

「本物のサンマさんってどんな味するんだろうな、ちょっと楽しみだな。
　火が要るようになったら、いつでも言ってくれよ」

　そういう斗南も茉菜にあわせて案外ノリノリになって来る。

「あ、サンマさんがたくさんいるよ～っ！！面白そう！
　灯くん、一緒にサンマさんと(で)遊ぼうっ！？
　こんなに沢山いるんだもの。きっと許してもらえるよねっ！」

　そう言うと茉菜は抱いていた七輪を地面に置き、網に買ってきた秋刀魚を置く。

「じゃあ、灯くん。レッツファイアー！」

　茉菜の掛け声に合わせて、斗南がろっこん『イグニッションハート（点火する心）』で炭に着火する。

「サンマさん！　これが至高の七輪ですっ！！」

　ドヤ顔で周囲のサンマさんたちに熱弁を奮う茉菜。

「これを作ったのは誰だぁ！　見た所300円ぐらいなんだぜぇ！」

　至高の品とは言い難い七輪を見たサンマさんたちは激怒して、その『しょぼい』七輪を蹴り飛ばそうと大挙した。
　しかし、あまりに押し寄せたサンマさんが多かったので、周囲はとんでもなく混雑し、サンマさん同士が押し合いへし合い、まるでバーゲンセールのおばちゃん軍団のようにカオスな状況へと発展していく。

　その光景にようやく危険を感じた斗南が、慌てて茉菜の手を引いて混雑から逃げ出す。
　同時に周囲はサンマさんの群れに埋め尽くされた――