半分コドモ、半分オトナ｜リアクション

半分コドモ、半分オトナ

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午後の授業というものは、当然お昼休みが終わってから行われるものだ。
お昼休みが終わっているということは、当然お昼ごはんを食べ終わっているということで。
つまりお腹が満ち足りているということで。
そして気温や日差しもちょうどいい具合になっているということで。
しかも窓際の席だったりすると、特にその効果は絶大なわけで。
結果、篠原翠響は激しい睡魔に襲われていた。
嗚呼、穏やかな初秋の日差しが眠りへ誘う。
だけど今は数学の授業中、こんなところで寝てしまった先生に叱られてしまうっ。
うつらうつらする頭で、どうか先生に当てられませんように――と祈りを捧げる翠響。
しかし残念ながら、その祈りを聞き届けてくれる神様は居なかったようで。
「篠原ー、この問題といてみて」
心臓が止まるかと思った。
「――ひゃ、ひゃいっ！」
危うく椅子を倒しそうになりながら跳ね起き、黒板へ向かう。
心臓はやたらドキドキしてるくせに、頭には眠気が半ば以上残ったまま。
それでもなんとかひねり出した答えを、数字が若干のたくった風になりつつも書きつける。
それでも一応正解で、少しほっとした翠響だった。

◆
午後に入れば、今日の授業ももうじき終わり。
高瀬練は教室の窓の向こうを眺めながら、今日の晩御飯について思案を巡らせていた。
（んー、今晩何にしようかなー。お父ちゃん、今日の漁で獲った魚何か持って帰ってるかなー）
まあ、何かしら魚を持って帰ってきてくれるだろうとして。
小さい魚だったらなめろうにして、そうじゃなければ焼けばいいか。
主菜はそれでいいとして、後は味噌汁と、ホウレンソウのお浸しでも作ればいいだろうか。
（そういや、ホウレンソウって残り少なくなってたっけ？）
あと確か、醤油も買い置きがなくなっていたはずだ。
どっちも買って帰らないと。
とりあえず、忘れないようにとノートの隅っこ辺りに書き留めておこう。
どこかに書いてだけでも案外、忘れなくなるものだ。
そんな風に、今日の晩御飯についてばかり考えていると、
「それじゃあ……、高瀬さん。これ答えられる？」
先生にあてられてしまった。ヤバい。
「え、えー……」
晩御飯のことを考えていたから、板書できていなければそも教科書の何ページかすらわからない。
よって、問題の答えなんてわかるわけもなく。思考を秒で切り上げると、練は元気よく答えた。
「はい、分かりません！！」
「ちょ、ちょっと高瀬さん。せめてもう少しくら」
「そんなこと言われても分からないものは分かりません！！！
あまりにも力強いダメな発言に、クラスメイトの一部が思わず吹き出した。
「高瀬さ」
「さっぱりです！！！」
もはや勢いに任せるがまま、頑として「わからない」ことを主張し続ける練。
そのうちに、
「……えっとじゃあ、他の人にやってもらいましょうか」
先生の方が折れてしまった。
声を押し殺して笑うクラスメイトたちを横目に、練は安堵の息を吐いた。
（ふー、何とか切り抜けられた……かな？）
先生がちょっと悲しそうな顔をしていたけど、気にしない。