帰って下さい冬将軍！｜リアクション

帰って下さい冬将軍！

■
　陽太がレバーを回すのに合わせて、少女がバレエを踊る。くるくると回ったり、腕を上げたりと流れる旋律に合わせて少女が動いている。
　寝太郎と冬将軍は、それをじっと見つめていた。
「これ、仕掛けオルゴールなんですよ。大分古いものなんですけどね」
　曲が終わると同時に少女は動きを止め、一礼をして舞台の袖に去っていく。細かい動きまで仕組まれた、見事な仕掛けだった。
「結構、面白いでしょう？　あとは……、あ、日本のものもありますよぅ」
　オルゴールの蓋を閉めると、今度は館の片隅へ二人を案内する。
　先程のオルゴールとは違い、和風の人形が置かれていた。
　陽太がぜんまいを引くと、小さな手が矢をつがえ、弓を引き、狙って矢を放つ。
　冬将軍が感心したように人形へ顔を近づけた。
「これ、日本のカラクリ人形なんですよぅ。たまに、矢が飛ばないこともあるんですけど」
　これで館内に展示されているものは一通り紹介出来たかと、陽太は室内を見回す。反応を見るに、楽しんでもらえたようだ。
「あ。そうだそうだ。この間館長に中央にあるでっかい天球儀の使い方を教わったので、良かったら動いてるところを見てみませんか？」
　陽太が指差す先にあるのは巨大な天球儀。館内の中央に鎮座するそれに、寝太郎と冬将軍の視線が注がれる。
「是非、お願いしよう」
「うん、見てみたいなぁ」
　二人の返事に陽太は頷くと、館内の照明を落とす。真っ暗になったかと思ったのも束の間、すぐにドムス・エクス・マキナの館内いっぱいに星が映しだされた。
　幻想的な光景に、寝太郎は息を飲む。まるで、宇宙にいるようだった。時折、遠くに見える星が瞬く。幻想的な光景に、冬将軍は満足げな笑みを浮かべた。
「どうです？　結構すごいもんでしょう？」
「ああ、色々な土地で様々なものを見てきたが……これほどのものは初めてだ」
「気に入ってもらえたら嬉しいわー」
　陽太が天球儀を操作すると、映し出される星の様子が変わる。
「これが、今頃の空の様子です。もう少しすると、こんな感じに……」
　先程とは変わった星の様子を見て、冬将軍は目を細める。薄暗くて表情はあまり見えないものの、楽しんでいることは分かる。これほど楽しんでもらえると、ここで働く者としても嬉しいものだ。二人の様子に、陽太の表情が緩む。
「機会があったらまた来て下さい。いつでも歓迎しますよぅ」
　館内の照明を点けると、陽太は平素のようににこやかな笑みを浮かべながら二人に近寄る。
「君も……良かったらまた来てねぃ。入館は無料だから、お気軽にどうぞ」
　館の入り口まで二人を見送り、手を振りながら声を掛ける。
　外は薄暗い。残念ながら分厚い雲に覆われ、天球儀と同じ星空は見えないが、雲の向こうには同じ空が広がっているのだろうと、陽太は空を見上げていた。