和装パーティへようこそ！｜リアクション

和装パーティへようこそ！

と言ってもすべて自前の紗姫とは違い、染髪とカラーコンタクトによるものだが。
八十八旗信彦は真っ白な着物に身を包み、その外見も相まっていっそう軽い印象を与えていた。

「やあやあせにょりーた！普段の制服姿とは違って今日の君は一段と可愛い……ってなんだ、キノコか」
「なんだって酷いですー！ひこにゃんの方こそ、今日はチャラさ倍増なのですー」
「冗談冗談。じょーだんだって。きょーもかわいいねー、キノコ」
「心がこもってないのですー！」

幼馴染同士のやり取りにおいて行かれる紗姫と牡丹。
そんなことよりもこいつ誰だよ、という視線が信彦に刺さっていた。
そんな視線に気づいたのか、信彦は持ち前のさわやかスマイルで２人に微笑みかける。

「こんにちはせにょりーた。はじめまして。
はじめてお会いするにはもったいないほどお着物がよく似合っていらっしゃる。
貴女の白いうなじと青い着物のコントラストが素敵です。
貴女の黒髪に映える牡丹が可愛らしさを際立たせてますね。
こんな綺麗な方に出会えて俺は幸せ者ですよ！」

よくもここまでのセリフがさらりと口から出てくるものだと。

紗姫と牡丹は一瞬きょとんと顔を見合わせたが、刹那小さく噴き出した。

「なにこいつ、すげーおもしれーじゃん」
「紗姫さんが麗しいのはいつものことですけどぉ、着物がすごくよく似合っているのは同意しますぅ」
「笑顔はもっと美しい！今日はどうぞその素敵な笑顔で１日お過ごしくださいね！」

最後にもう一度さわやかスマイルを放つと、信彦は３人から離れて行った。

「……あれ、私の扱いひどくないですかー？」

「これ、可愛いなあ……」

髪飾りなどの小物が置いてある箱を眺めながら、花厳望春がぼそっと呟いた。
着物はまだ選んでいないが、それよりもかんざしや髪留めなどの髪飾りの方に気が向く。

「和服の生地って手触りが独特なんだよなあ。かんざしもすごく綺麗」

「ひゃあっ」

かんざしに見惚れていたせいで真後ろに立っていた笠原ひびきに気付かなかったらしい。
２人は背中同士をぶつける形になり、望春はあわててぶつかった相手に謝った。

「ご、ごめんなさい、気づかなかった！」
「ああ、大丈夫大丈夫。……おとこ？」

ひびきは望春の顔をまじまじと見てぼそっと呟く。

「お、男だよ！正真正銘男だよ！」
「あはっ、ごめんごめん。……かんざしつけるの？」

その一言に望春は自分がかんざしを持ったままだということに気付いて両手を振った。

「ちがっ、ただ綺麗だなぁって思って！」
「うん、わかる。着物もかんざしもすごく綺麗。……あたしが着ても大丈夫なのかな」

最後の一言に望春が首をかしげる。

「どうして？絶対似合うよ。だって黒髪すごく綺麗だし、まとめて着物着たらかっこいいと思う」

純粋な望春の賞賛にひびきは一瞬頬を染めかけるが、目線をそらしてやり過ごす。

「着物、決めれないならあたしが見てあげようか」
「本当！？かんざしとかにばっかり気をとられて全然考えてなかったんだー。ありがとう！」

この後ひびきが素で女性物の着物を渡したことはここだけの秘密である。