和装パーティへようこそ！｜リアクション

和装パーティへようこそ！

少し離れた場所では獅子尾優華が浅山小淋と伊藤佳奈の着付けを行っていた。
紫色に濃淡で大輪の花が描かれた着物を纏う優華と、対照的な明るい橙色のひまわりが咲く着物をまとった佳奈。
そして落ち着いた黒地に桔梗柄の小淋。それぞれに個性が出ていた。

「今日はね～塩チョコ持って来たの！後で一緒に食べようね！」

にこにこと手にした箱の蓋を開ける佳奈。中には小ぶりなチョコレートが重なっていた。

「美味しいんだよ～」
『私も』

そう書いたメモ帳を横に置き、小淋は綺麗に包まれた箱を取り出した。

『アップルグラッセと干しリンゴです。後で食べましょう』

綺麗な文字の横に小さくリンゴのイラストを入れ、箱の蓋を閉じる。

「２人とも美味しそうな差し入れね」

優華は友人２人に笑顔を向ける。

「私はお菓子は持ってこなかったけど……、茶器があるみたいだし、お茶を点ててあげるね」
「本当！？」
『楽しみです』

それぞれ反応を返す友人に、優華は美味しいお茶を点てようと心に決めたのだった。

「おっと、そこにいるのはリンちゃんじゃない！」

小淋の後ろからにゅるっと出てきたのは高梨彩葉。
春らしいピンクに、猫柄の着物を着ていた。普段おろしている前髪を上にあげ、おでこを出している。

『高梨さん！いらしてたんですね』

突然現れた彩葉に少し驚きながらもメモ帳にさらりと文字を返す。

「うんうん、美味しい和菓子が食べれるかもしれないしね。お友達は２組の子？」
『そうです。獅子尾優華さんと伊藤佳奈さんです。お友達です』

メモ帳に書かれた名前を見て彩葉の目線が優華に向く。

「獅子尾ちゃん、って君かな？」
「そうよ。はじめまして」

いきなり会話の矛先が自分に向いたことに驚きつつ、優華は右手を差し出す。
彩葉はその右手を両手で包むように握ると、

「いつかあの非公式新聞出した奴、一緒に懲らしめようね。風紀委員として！」

風紀委員の仕事かそれは、という疑問はさておき、どうやらいつぞやの身体測定の時のことを言っているようだ。

「そういえば優華ちゃん、新聞に名前載ってたね」
「囮作戦が世に出るなんて思ってもみなかったわ……」

優華は悔しそうにぎりりと歯を食いしばると、

「ええ、いつか私たち風紀委員の手であのような悪を裁いてやりましょう！」

風紀委員の仕事かどうかは風紀委員長にお任せするとして、ここで新たな友情が結ばれたのだった。

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