出現！　寝子島の黒い青魚（矛盾）｜リアクション

出現！　寝子島の黒い青魚（矛盾）

【探偵と助手とヒーローと】

「……っと、こいつはヤバいな」
　一之瀬雨丸は事態のただならさに気づいて、サンマさんと古苗木美姫のもとへ駆け出そうとした。
　が、それよりもわずかに早く、

「その女性から手を放せ！」

（え……？）
　夜のシーサイドタウンに、マスク越しのように少しくぐもった、それでいてよく通る年若い男の声が響き渡った。
「……あ゛あ゛ん！？　この俺様に指図しやがるたぁ、いい度胸だぁ！　いったいどこのどいつだ――」
　腹の底に響くような罵声をあげて、サンマさんが声のした方を振り向いた。
　そこにいたのは――。

「……あ？」

　戦隊モノの特撮ヒーローのような格好をした謎の人物であった。
「俺の名はザ・ストレイト！　寝子島の平和を乱すというのなら、たとえ相手がサンマさんでも俺は容赦はしないッ！」
　その姿にサンマさんはしばし呆然と立ち尽くしていた。
　やがて。
「……てめぇ、こんな夜更けの街を着ぐるみなんか着て練り歩きやがって……何考えてやがる！？」
「お前にだけは言われたくないッ！　あと着ぐるみじゃなくて、これはヒーロースーツだっ！」
　サンマさんが恐れおののくようにそう言って、ザ・ストレイトが鋭くそう切り返した。すわ新手のお笑いコンビかと思うほど二人の息は無駄にピッタリだった。
「…………」
　美姫は事態の急展開についていけず、呆然と二人している。
（……今ならやつの隙を突いて、美姫ちゃんを助け出せるかな？）
　雨丸はよくわからない状況に困惑しつつも、気配を殺して行動を開始した。

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