月のお散歩｜リアクション

月のお散歩

「こ、これは一体どういうことなんだー！」
　勇者姫音と骨大好き少女いおねは、はためく国旗とふんどしに驚愕していた。
「ふんどし？　月面に……」
「まさか、古代文明の遺産？」

　ちょうど修・真央ペアから入れ替わりで、静かの海を訪れた勇者一行。

　この手の知識に、一日の長のある円を、二人は振り返る。
　円はじっと腕組みをして、言葉を発した。

「違うよ。これは古代文明の遺跡じゃない」
「何だって！」
「これはボクらの追跡を邪魔する連中の、巧妙な罠なんだよ」
「それはどういうことなんだよ！」

　人間では体感不可能な絶妙の間で、円は俯くと、キッと顔を上げ、こう言い放った。

「『陰謀』だよ！」
「なんだってーー！！」

　陰謀！
　この世には歴史を裏から操作し、真実を秘匿しようとする秘密結社が多く存在する！
　１３人委員会、フリーカーペンター、イルミネーション、青薔薇十字軍、シルバードーン……政財界、マスコミに深くコネクションを持ち、彼らは日々暗躍し、真実を隠そうとしているのだ。

「どんな真実を……」
「たとえば」円はふっと俯くと、預言者のごとく高らかに叫んだ。

「人類はまだ、月に到達していない！」
「なんだってーー！」
　二人の少女の絶叫が、月面に轟いた！！

「アポロ計画がプロパガンダの為に作成された巧妙な偽物であることは、もはや常識……」
「そ、そうだったのか……」
「考えてもみてよ。人類がそうそう、月に行ったり、月面をあるいたりできると思う？」

「では」姫音が言う。「この寝子高の旗も……」
「ボクたちを惑わせるための作戦だね」
「このふんどしも……でしょうか」
「巧妙なやり口、と言わざるをえないね」
「ぶち折っちゃおうか」姫音が言う。「勇者だし」
「いや、あえてここは残しておくほうがいいね」

「何で？」二人は首をかしげる。
「奴らは手ごわい……ここでこちらが、奴らの存在に気付いたとなれば、対決は避けられない。……奴らの手から逃れるには、あくまで油断させないと」

　円はふんどしに歩み寄り、ひらひらと弄ってみせる。
「さらに、これをこのままにしておけば、牽制にもなる。
『このような見え透いた罠にかかる我々ではない』と思わせれば、敵もおいそれと手は出せないはずだよ」
「なるほど……」
「このままにすることが、奴らの追撃を躱し、奴らをけん制する最良の手段だね」

　かくして、三人は陰謀団の術中にはまることなく、その場から離れた。
　彼らは見事陰謀を見抜き、相手の裏をかき、牽制することに成功したのだ！
　……たぶん。

　あとにはなにごともなかったように翻る、国旗とふんどし。