月のお散歩｜リアクション

月のお散歩

「しゅ……朱蘭ちゃん、もしや兎さんと酒盛りなのだ？」
　兎に誘われ、修と真央は庵に入ると、そこでは知った顔が酌み交わしていた。
　もう何が起きても動じない修と真央は、部屋のはじに座る。

　宴は佳境に迫っていた。
　酔うほどに服を脱ぎ、今や半裸の朱蘭。
　それでも気分はうつろだ。
　
　冴来とかぐや姫は、じっと睦ましく躰を寄せ合う。
　かぐや姫の着ているのは、冴来の洋服。
　冗談めかし、二人は召し物を取り替えていた。
　そして冴来は、十二単を艶やかに着崩して、肩をあらわにして見せる。
「ねぇ、かぐや姫様、月には不老不死の薬があるって聞いたわ。その薬、分けてほしいなあ……」くすぐるように呟く冴来。「駄目なら材料だけでも……」
「冴来―！　もっとあたしと仲良くしようぜ！」
　朱蘭は冴来に飛びつく。
　かぐや姫と冴来の間に体をわりこませ、ことさら冴来に頬ずりをし、頬に接吻をする。
　いつも以上に、躰を擦り合わせようとする。

　冴来の匂い、冴来のぬくもりが朱蘭を包む。
　これは、あたしのもの。だれにも渡さない。

　占有権を宣言する子供の様に、かぐやを振り向き舌を突き出す。
　その瞳が、不意に涙に滲む。

（もしかして、かぐや姫に嫉妬してたの？）
　冴来の耳元の囁きに、朱蘭は顔を赤らめる。
「このまま、冴来が、月に残ってしまうんじゃないかと思ったから……」
　もごもご答える朱蘭を、冴来は胸元に引き寄せる。
「よしよし、可愛いなあ」先ほどのお返しとばかり、冴来は朱蘭の細身を撫でる。
「朱蘭、だぁい好き」

　ことさらに手管を駆使せずとも、冴来は朱蘭を知り尽くしている。
　どのように弄れば、苦しむのか。歓ぶのか。
　目を潤ませて甘える朱蘭に、冴来は囁く。

「私もそろそろお酒を貰おうかな……なんなら朱蘭が飲ませてくれてもいいんだよ？」