月のお散歩｜リアクション

月のお散歩

　絶世の美女とうたわれたかぐや姫。
　部屋の奥にいるのは、噂にたがわぬ美女であった。
　かすかな憂いの翳は、地上恋しさゆえか。

「うわあ、とっても綺麗な人がいる……」瞳をキラキラさせて見つめるのは凛。「えっと、かぐや姫さんですか？」
　こくりと頷くかぐや。
（わ、本物だー！）凛は心の中で完成を上げる。「本当に美人さん…そりゃ命がけで結婚したいって思う人も出てくるよね……」

（やっぱり、きれいな人だね）そう思う冴来の傍らで、早速カップを取り出し、宴会の準備を始めるのは朱蘭。
「一緒に宴会しようぜ！」声を張り上げる朱蘭。
（筋金入りの宴会好きだね）苦笑しつつ、冴来は配膳し、しっかりかぐやの隣にすわる。
　かぐやが地上を恋しんで陰気なムードになるのを回避する、朱蘭のナイスプレーであった。
　回されるろっこん済みの液体。兎の餅に、爺さんのこしらえた料理。
「ほらほら餅つき兎も、遠慮なく酔って楽しめ！！」
　ぱあっと宇宙服その他を脱いじゃう朱蘭。

　一気に華やぐ場。

　そこへ遠慮がちに、つと立ち上がり、かぐやの元に歩みよる輝夜。
　月のかぐやと、寝子島の輝夜が、目を合わせる。
　輝夜は、爺さんを見たときから他人のような気がしなかった。
　なんとなく、故郷に帰ってきたような安堵感を感じていた。

　かぐやと、輝夜。
　いかなる縁のあるのか。
　面影は似るところのない二人の少女は、それでもとても似ていた。

「月での生活を……教えてください」自己紹介をして輝夜は、かぐやに言う。「とても、興味がありますので」
　もちろん、とかぐやは頷く。

　月のかぐやと、地球の輝夜。ふたりのかぐやが引合される。
「この狭い太陽系で、二人のかぐやのいること。それが出会うこと」爺さんが、重々しくのたまう。「これが奇跡でなくて、なんであろう……」
　一同が固唾をのんだ。

　ピンポーン。
　そのとき、爺さんの頼んでいた通販の商品が届いた。
「こんちはー、木星インテリアですー」
「あ、木星の家具屋さん」
「お前はいらんのじゃあ！」