イート・ア・ライブ｜リアクション

イート・ア・ライブ

【Prologue】

　いまや家庭科室には大勢の生徒達で賑わっていました。
　彼らはみな大村くんにパンを食べさせるためにやってきました。
　が、その目的や理由は一人一人微妙に違うようで。

　たとえば、八神修くんは大村くんに美味しいパンを食べさせ、ゲテモノ食いを止めさせるためにやってきました。
　しかも、
「いや、助かったよ、八神。私としたことが、生地の発酵時間のことをすっかり忘れててさぁ」
「いえ。でも間に合って良かった」
　彼は高野先生のうっかりにいちはやく気づき、空き時間を使って生地づくりを済ませていました。
「みんなも使ってくれていいよ。ただし、これを使うと美味くなっちゃうから、要注意な」
　冗談っぽく言った修くんの一声に部屋の空気も温まり、

　ついにパンづくりがスタートしました。

【ちくわと×××××】

　新井すばるくんは、神野美野梨さんの手作りパンが食べられると聞いて、そこにやってきていました。
　しかし。
「なんだい、ここの雰囲気？」
　なにやら妙な空気にすばるくんはぽりぽり頬を掻きます。
　とりあえず、彼は美野梨さんを探し、
「やあ、風の噂で神野さんの手作りパンが食べられると聞いて来たんだけど」
　と、声をかけました。
「あら、すばるくんも食べてくれるの？　助かるわ」
　すると、彼女は嬉しそうに手持ちのパンを差し出してくれます。
「うん。これは形もよくて――」
　と、すばるくんは途中まで言いかけて、
「……いや、個性的な形だね」
　慌てて訂正します。そのパンはとても楽しい色と形をしていました。
（いや、食べ物は見た目じゃないからね）
　すばるくんは意識を目でなく鼻に集中させます。
「そして焼き立てのいいかお……うぷっ……か、かおりも個性的だね……」
　すばるくんはオブラートに包んだ言葉でコメントを続けます。
「そう。例えるなら新緑の軽井沢の爽やかな空気を纏った名もなき雑草と池の水をコンクリートミキサーでかきまわしてみました、みたいな――」
　しかし、微妙に包みきれていません。
「なるほど。参考になるわ」
　一方、美野梨さんはそれに気を悪くした様子もなく、むしろ嬉々としてメモを取っています。
「それで、味の方の感想も欲しいんだけど」
「あ、ああ。うん、食べますよ。食べますとも」
　すばるくんは覚悟を決めて、パンにかぶりつき、

「…………ッ！？」

　そのとき、彼の体内に激しい稲妻が走ったのです。

【ポリバケツに愛を】

「ポリバケツの精霊ですか、悠は凄い異名をもっとるんですねー」
　感心したように呟いたのは倉前七瀬くん。
「あえて不味いパンをつくろうとは思いませんが、そういうことなら今までに試したことない組み合わせで作ってみましょう」
　七瀬くんの言葉に、彼の目の前にいた納十一くんも力強く頷きます。
「そうだよ。大勢の人達が、安全で美味しいものをつくろうと頑張ってるのに、そうやって苦労して作られた食べ物よりゲテモノの追及を優先するだなんて……おれは嫌だ！」
　熱い魂の叫びを迸らせる十一くんに、七瀬くんも心を打たれたように頷きます。
「頑張って、悠に美味しいパンを食べさせてあげましょう」
「ああ！」
　二人はがっしりと握手を交わし、パンづくりを始めます。

【ポリバケツに粛清を】

　その頃、少し遅れて家庭科室に向かう桜崎巴さんの姿がありました。
「少し遅くなっちまったねぇ……」
　どうやら彼女は一度寮に戻ってからここに来たようです。
「おや、そこにいるのは桜崎はん」
　と、そこに骨削瓢くんの声がかかります。
「……あん？　誰かと思えば瓢じゃないか。また何か悪巧みかい？」
「悪巧みだなんて失礼な。あっしはただ食道楽と食べ物を玩具にすることを履き違えている輩に天誅を加えてやるうとしているだけですよぃ」
「やっぱり悪巧みじゃないかい。あんた楽しんでるだけだろ？」
　瓢くんはやはり邪悪な笑みを浮かべるだけで、否定も肯定もしません。
「そういう桜崎はんこそ、まさかギルティーな精霊に手づくりパンをやろうってわけじゃないんですよねぃ？」
「それがそのまさかだったりするわけさ。もっともパンはパンでも他の連中とは一味違うパンだけどねぇ」
　にたり、凄絶な笑みを浮かべる巴さん。
　二人はにやりと笑いあうと、
「それじゃまぁ」
「行くとしようかね」
　がらりと家庭科室の扉を引いて、中に足を踏み入れます。

　二人はいったい何をするつもりなのでしょう？

このページにイラストを設定する

イート・ア・ライブ

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧