あのぬいぐるみ、どこいった？｜リアクション

あのぬいぐるみ、どこいった？

「残念でしたね、司書の人もみてないなんて」
「そうだね。なら今度は『予言の書』を探してみたほうがいいかな？」
　彩葉と智瑜が瑠樹のいた場所に戻ってくると、そこに置かれていたのは見覚えのある置手紙だった。
「ど、どういうことでしょう！　もしかして、誘拐？」
「そうでもないみたいだよ」
　彩葉は首を振ってスマホの画面をみせた。そこにはピンクのリボンをかけた白い猫が写っている。その脇には見覚えのあるリコーダー入れが不敵な笑顔で見切れているのだ。
「『ひょんなことから男の子と一緒にネコちゃん追跡中―』だって。瑠樹くんと一緒にいる子、知り合いなんだ。だから心配しなくて大丈夫だよ」
　さらに、と彩葉は別のアイコンをみせる。
「只今教会からお友達が向かっているところ！　だから私達は私達のできることをしておこう」
　智瑜はほっと胸をなでおろし、こくりと頷いた。
　ふたりが本を探し始めた頃、セレッソは教会から図書館へ向かう途中だった。
「ハァ、まさかあの写真がシスターのちょっとした話題作りだったなんテ！　一体ラヴルクンはどこ行っちゃったノ？」
　しかし、収穫がなかったわけではない。セレッソの手には教会に行くときにはなかった一冊の本があった。
「一応シスターから借りてきた本、役に立つといいノ！　待っててね彩葉チャン！」

　元気よく駆けだすセレッソとすれ違ったのは、真央に呼び出された士だ。
「しかししろたん、なぜこんな暴挙に……。そしてカピバラ衆はどこへいったのかって、うわ！」
「わん！」
　鉢合わせしたのは柴の仔犬を連れた級友だ。
「八神、どうしてここに？」
「邪衣こそ。熊皮どうしたんだよ」
「それが話すと長いんだ」
「奇遇だな。俺もだ」
　道すがらお互いに現状を話していると、そもそもの発端が同じことに気づく。
「なるほど。じゃあ俺たちがここで会ったのもまあ妥当か」
「そうだといいけどな。なぜカーキーが邪衣に反応したか気がかりなんだ。俺は動物部屋の匂いを追わせてきたのに」
　士の軽口に修が苦笑すると、カーキーがもう一度高い声で鳴いた。
　カーキーに導かれ着いたのは士が指定されていた待ち合わせ場所だった。
「あれ、修ちゃんも来てたのだ！？」
　真央の腕に抱かれた熊皮、そしてしろたんにカーキーは思いっきり吠えはじめる。
「あ、ご主人～、お腹のチャック開けてよ～」
「お、おう。そう云えばしろた……んは地図持ってったんだろ。きっとお腹の中だと思ってたんだ」
　士がチャックを開けると、そこから出てきたのは地図だけでなく……。
「あれ、ハムスターが」
　ころんとでてきたちいさなぬいぐるみを無花果が手のひらでキャッチする。
「道の途中で猫に追っかけ回されてたからお腹に隠してあげたんだー。すっかり忘れてた～」
「！　なるほど、だからカーキーは」
　修がカーキーをみると、つぶらな目をいっぱい輝かせどんなものだと云わんばかりに修を見返している。
「信じてやらなくて済まなかったな。お前は優秀だよ」
　修がカーキーに餌を与え、頭を撫でてやっていると、
「いいよね、そうやって褒めてもらえるのはいっつもペットのほうなんだ」
　無花果の手の中で小さな声がつぶやいた。しかしそれは、無花果以外には聞こえなかったようだ。
「なんだ、地図にバツがついてるぞ。しろたん、夜見山にいきたかったのか？」
「ほえ～、ばれちゃった～」
「やったのだ！　目的地が分かったのだ！」
「そりゃじゃあとりあえず夜見山に向かおう。きっとまだ見つかっていないぬいぐるみも……勿論僕のものも含めて、無事揃っているといいんだが」
　手の中でまだぶつぶつ云っているハムスターを気にしながら、無花果が年長者らしく声をかけた。