あのぬいぐるみ、どこいった？｜リアクション

あのぬいぐるみ、どこいった？

「テ、テンチョーサン、それはホントナノ！？」
　いつものように洋菓子店『Raton』に顔を出した御薗井Ｅセレッソは自分が命名したあらいぐまのぬいぐるみ、ラヴルがいなくなってしまったのを知った。確かに、いつもちょこんとすわっている看板ぬいぐるみの姿は見当たらない。
「ダイジョブよテンチョーサン！　ワタシが絶対見つけてくるワ！」
　店から離れられない店長の代わりに、セレッソは意気勇んで町にくりだした。
「誰かが持っていったノ？　それとも……」
　実はセレッソにはすこしばかり心当たりがあった。それは最近ネットで騒がれていた「教会でお祈りをする人形」の写真である。また同じ時期に、美術館から図書館の界隈を行進しているぬいぐるみをみたという書き込みも話題になっていた。
「ラヴルクンもお祈りしたり行進したりしているのかもしれないワ」
　迷ったセレッソの足が最初に向けられたのは教会へと続く道だった。

　その近くで、曖浜瑠樹はお気に入りの白猫リコーダー入れと一緒に聞き込み調査をしているところだった。
「あ、ねえねえ、白いうさぎのぬいぐるみをみなかったかねぇ？　ラピっていう名前なんだよぉ」
　声をかけられたのは同じようにぬいぐるみを探していた高梨彩葉だ。
「え、もしかして君も？　実は私もぬいぐるみを探してるんだよね。大切な人にあげるつもりだったオマメ２号……いや、犬の編みぐるみが消えちゃって」
「こんな置手紙あったりした？」
　瑠樹がリュックから取り出した汚い字の手紙をみて、彩葉は頷いた。
「そうそれ！　じゃあ君と私のぬいぐるみはおなじところにいるかもね。ここまで行動が似てるんだし」
　彩葉はよし、と立ち上がる。
「私これから、ぬいぐるみが目撃された場所に行こうと思ってるんだ。一緒に行ってみる？」
「もちろんだよぉ」
　瑠樹は白猫を抱きしめ、大きく頷いた。

　部活に行こうとしていた後木真央は、ねこったーであがってくる『ぬいぐるみたちの失踪』に関するつぶやきをみて思わず声をあげた。
「学校からだと……養護施設より病院が近いのだ！」
　真央が気になるのはぬいぐるみのことよりも、以前ぬいぐるみを通して関わったことのある子供たちの方だ。急いで病院に着き、埃を落としてプレイルームに入ると、案の定子供たちは慌てふためいていた。
　看護師の１人からぬいぐるみのそばに落ちていたという紙切れを貰うと、真央はすぐさま写真を撮り友人へのメールに添付した。
「大丈夫なのだ！　真央ちゃんがすぐぬいぐるみさん達を連れて戻ってくるのだ」

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