あのぬいぐるみ、どこいった？｜リアクション

あのぬいぐるみ、どこいった？

　夜見山を降りるロープウェイの中は、人目がないこともあってとても騒がしい。
「こらお前たち、あんまりはしゃぐな！」
「ほえ～、お星さままだ降ってる～」
「うつくしいのじゃ」
「キラキラ光るお空の星YO!」
「同志たちが無事月の園へ行けるといいのでござる」
　その元凶はほとんどぬいぐるみたちだ。
「ハムちゃんとはどこではぐれたんだろ？　行きは一緒だったのにねえ」
「カピバラがずんずん先に行っちゃんたんだよ！　揚句猫には追いかけ回されるし……！」
　えぐえぐ嘆くハムスターをカーキーがべろんと舐めた。
「うう、犬くさいよぅ」
「まんざらじゃないくせに」
　白猫にそう突っ込まれると、恥ずかしそうにしっぽをくねらせた。
「これは是非新作のネタに……はっ！　ハム、猫、お前たちいつの間に袂に忍び込んだ！」
「あったかいんだもの」
「しかし、これだけのぬいぐるみが集まってくれればみんな喜ぶのだ！」
「ああ。無事にみつかってよかった」
　真央のリュックに入りきらないぬいぐるみたちも膝の上を占領したり頭によじ登ったりと楽しそうだ。

　もう一組のほうは割合落ち着いている。
「きみの青いペンダントきれいだね」
「そっちの時計もなかなかよ」
　同じうさぎのラピとうーたんがほのぼのと語り合っている横では、
「ぼくは彩葉ちゃんじきじきに編んでもらったんだよ」
「ぼくだって、いつも瑠奈ちゃんにブラッシングしてもらってるワン！」
　同じ犬属性の二匹が互いに自慢ていた。ラヴルはその隣でマカロンを持ったままぶんぶんと腕をふっている。
「ごめんよ、マカロン持ってたから手紙書けなかったもんよ」
「そんなこといいノ！　そんなことより、まだ星の力はラヴルクンたちの中に残っているノ？　なら、今のうちにたくさん遊んでおきたいワ！」
　その言葉には、ロープゥエイの中のみなが頷いた。
「それじゃあ、鷹の時のお兄さんと真央ちゃんお姉さんがのってるほうも誘おうよ。みんなで遊ぼう」
「なら、連絡しとくね」
　瑠奈がメール送ると、すぐに返事が返ってくる。
「もちろん、だって」
「やった！沢山思い出作っておこうね、オマメ」
「私達も。ずっと離れ離れでしたもんね。うーたん」
　夜空を見上げながら誰もがもう少しだけ、この不思議な時間が続くことを祈っていた。

　赤銅スフィアは目が覚めると、枕元のうさぎのぬいぐるみが戻ってきたのを確認し、ぎゅっと抱きしめた。黒ボタンの瞳が流星群を見てきたことなど知らないまま。

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あとがき

担当マスター：貝
ファンレターはマスターページから！

　手元にアザラシのぬいぐるみがみっつあります。
　どこかの三匹衆のように喋って欲しいなあと、お話を書いている間に何度思ったか。
　最近はくらげのぬいぐるみが欲しい貝です、こんにちは。

　シナリオご参加頂きありがとうございました。
　ぬいぐるみたちの逃避行、楽しんで頂けたでしょうか。
　『ファンタジー・SF』に免じてトンデモな部は大目に見て下さると幸いです……。

　みなさんのかわいいぬいぐるみを動かしたし、喋らせたりするのはとても楽しかったです。
　このリアクションが、ぬいぐるみとの新たな信頼、絆を築くきっかけになるようでしたら幸いです。

　それでは機会がありましたら、またどこかで。

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