あのぬいぐるみ、どこいった？｜リアクション

あのぬいぐるみ、どこいった？

「さあみんなで一緒に帰るのだ！　ってあれ？　人がいるのだ」
　真央、士、修、無花果は少女三人組に目を向ける。
「あ、やっと会えた！　心配したんだよ」
　彩葉、智瑜、セレッソ、は瑠樹と瑠奈をみてほっと息をついた。
「みんな、ちょっといいかな」
　瑠奈は二組に顔を向け、こほんと咳払いをする。
「ぬいぐるみたちはきちんと自分で戻るって云ってるんだから、ここはあたしたちがずかずか入っていかないで、見守るところだと思うんだ」
「瑠奈ちゃんの云う通りにしてほしいワン！　ぼくらはまだ帰る訳にいかないワン」
　後ろから加勢するのは瑠奈のぽちだ。ぽちを連れてきた瑠樹は肩にラピをのせている。
「そこでオレたちのこと待っててくれたんだあ」
　瑠奈はぽちが喋ったことに驚くが、そっと抱きあげて頬ずりをした。
「喋ったノ！」
　セレッソがぽちを指さして目を真ん丸くすると、その横からひょいとマカロンを持ったアライグマが現れた。
「今はぼくたち動けるししゃべれるんだもん」
「ラ、ラヴルクン！」
「心配かけてごめん。でもどうしても来たかったんだもんよ」
　ラヴルにかぶせるようにラピが話し出す。
「そう、ラピたちはここで見なくちゃいけないものがあるの」
「知ってます。それはあなたたちにとっては神様、のようなものですよね」
　智瑜がそっと前に出ると、ラピに写真集をみせた。ラピはそこに載っているうさぎに自分を重ねてうっとりしている。
「ちゃんと調べてきました。私達、みなさんのお手伝いにきたんです」
　それを小耳にはさんだ士はしろたんのほっぺをひっぱる。
「？　どういうことだ、聞いてないぞしろたん」
「ほえ？」
「それはこちらからお話します」
　穏やかな声と共に姿を現したのは、年季のはいったうさぎのぬいぐるみだ。智瑜は図書館でみた絵本のうさぎを思い出した。二匹は瓜ふたつなのだ。
「お嬢さんの仰る通り、私達は星を見に来ました。ぬいぐるみ達の間では、まさしくそれは希望の光。私達が束の間の間こうして話したり動けたりするのも、きっとこの星の力なのです。ぬいぐるみの中には私のように僅かな神魂を持った者もいますが、それだけでは補えない部分を、星の力が増幅しているのかも知れません」
「……本当にそれだけか？」
　口を挟んだのは無花果だ。
「ただ星を見に来るのなら、部屋の窓からだって見える筈だ。わざわざここへ集まる理由は？　人間に見られる危険を冒してまで」
　半分は手の中にいるハムスターに尋ねていた。
　ハムスターはそれを察したのか、しっぽをぴんとつっぱらせる。
「大丈夫だよっ！うちのご主人は変人だけど優しいから、話してみてよ！」
　ここまで瑠奈と瑠樹を連れてきた白猫がひょいと無花果の肩に飛び乗ってきた。
「要らないことを云うんじゃない」
「えー！　だって、ほんとのことだよ」
しかし問いに答えたのは、無花果の周りをわらわらと囲んだカピバラ四匹集だった。
「ぼくらは月の園に行く仲間を見送りに来たんだよお」
「そう、わっちらは旅立つ輩を励ますのじゃ」
「流れ星は月の園へ導いてくれるのでござる」
「SEYバイバーイ！　SEYグッバーイ！」
　周りの空気もなんのその、意気投合してはしゃいでいる四匹に士は首を傾げた。
「あれ、一匹増えてる？」
「すまん邪衣、俺のも混じってる」
「……ねえ、今の本当なの？」
　彩葉がうさぎに尋ねると、うさぎはええ、と沈んだ声を出した。

このページにイラストを設定する