星の降りしきる夜に｜リアクション

星の降りしきる夜に

〔銀河鉄道２２２系〕

【仮面に覗く素顔（二）】

　お茶とお菓子を肴に二人はいろいろな話に花を咲かせていました。
（それにしても……やっぱり、知り合いと雰囲気が同じ……）
　ちらと武道くんの顔を見て、ロベルトくんもまたそんなことを考えていました。
（……少し、探りを入れてみようかな？）
　ロベルトくんはコホンと咳払いを一つしてから、武道くんに訊ねます。
「……時に志波。もし……もし、仮に、何でも隠せる仮面があったとして、それで何を隠す？」
「……え？」
　武道くんは口に運びかけていたベットボトルをその場で止めて、ロベルトくんの顔を二度見します。
　その表情は驚いているようで、それでいてどことなくそんな問いを予感していたようにも見えました。　

（あー。こりゃ俺もドゥーエってバレテルナー）
　武道くんはまた自分の正体を悟られたことに気づきつつ、あえて野暮なことは言わない友人の気遣いに感謝しながら真剣に言葉を選び始めました。
「……何を隠す、か。そう、だな。俺が隠すのは『本音』、『苦痛』、『痛み』、『負の感情』」
　いつもの軽い口調ではなく真剣な声音で、そう返事をします。
「……っ」
　ロベルトくんはいつもの陽気な仮面の裏に隠した武道くんの素顔に息を詰まらせます。
「表に出すのは正の感情だけで充分だ。でないと、誰がみんなを笑わせる」
　悲壮な決意を滲ませた言葉を口にした武道くんは、はたといつになく真剣な表情のロベルトくんに気づき、
「……って、欲張りすぎかな。テヘペロ☆」
　と、いつものおどけた調子に戻って言います。
（む、柄になく真面目に答えてしまったな）
　美しい景色のせいかな、と窓の外に視線を泳がせた武道くん。そんな彼に、
「……ん、しかし。志波。そんなふうに抱え込まれると、気遣ってくれるのは嬉しいけど信頼されていないみたいで寂しいぜ……とか志波の友人なら言うんじゃない？」
　ロベルトくんもまたいつもの仮面を少し外した声と表情で、静かに言葉を返します。
（ロベルトくん……）
　武道くんは思わず少し胸がジンとしてしまいました。
　一瞬、素の表情を垣間見せてしまったことから生じていた後悔が刹那にして吹き飛びました。
（真面目に答えて、よかったんだな……）
　ふっ、と息を吐くと今度は武道くんがロベルトくんに問います。
「じゃあ質問を返そう。君ならその仮面の下に、何を隠す？」