希望戦士ニャンダム・レクイエム｜リアクション

希望戦士ニャンダム・レクイエム

●公国軍パイロット　トナミ・アカシ

「トナミ・アカシ（灯斗南）君。これが起死回生の逆転劇を起こすためのわが軍の秘密兵器だ。
　これなら憎き敵、共和国軍に致命的な打撃を与える事ができる。よろしく頼むぞ」

　上層部からの命令に新人パイロットのトナミは耳を疑った。
　新型の秘密兵器と言えば聞こえがいいが、目の前にしたこの機体はまだテストも終わっていない様な実験機だ。
　渡されたマニュアルを見る限り、可変機能を搭載した汎用機で驚異的な速度、運動性を有するが可変機構のせいで構造が複雑かつ脆弱なようだ。
　これではまるで動く棺桶。死にに行けというのも同じではないか――

　トナミは心中穏やかではなかったが、軍属の者として命令は絶対。断る事などできるはずもなかった。

　否応なく出撃したトナミの機体だったが、スペック通りの機体性能のおかげで、次々と共和国の機体を撃墜する。
　だが、少しでも被弾すれば命は無いという緊張感でトナミの心は押しつぶされそうだった。
　何のために戦うのか。国のため？　そんなもののためになんで自分がこんな思いをしなくてはいけないのか。
　仲間には故郷で帰りを待つ家族や友人がいる。しかし自分にそんな相手は居ない……
　欲しいと漠然と思いつつも自分から手に入れようとしてこなかった結果、死を前に誰の顔も思い出せない。
　そんな最期は嫌だ。
　せめて誰か一人でも……

　生と死の狭間で人生を振り返りやり直したいと願う。死を前にしてやっと生きたいと願った――

　次の瞬間、実戦で何度も変形した事で限界の来た機体は爆発し、宇宙の藻屑と化した――