希望戦士ニャンダム・レクイエム｜リアクション

希望戦士ニャンダム・レクイエム

●公国軍パイロット　ツバサ・ユウスズ

　ツバサ・ユウスズ（夕鈴翼）の乗る機体はブチ。それは長引いた戦いのために、生産コストの高いロボットではなく、簡易なカプセル型戦闘機を開発するに至った刻々の苦肉の作である。
　人類初の大型人型兵器を開発し、開戦時にはその革新的な性能で破竹の進撃を誇った公国軍からすれば、このような技術の後退した間に合わせ兵器を投入せざるを得ない状況になったことは、まさに苦渋の選択であった。

　ブチでは共和国軍が鹵獲した公国軍の新兵器ニャクのデータを元に開発したニャンダムやニャンキャノンに対抗するには無理がある――　そんな事は現場の兵士だけでなく、軍上層部にも分かってはいた。
　だが、ここで戦いをやめる事を由としない者が多かったのもまた事実であった。

　また一つ、戦場で味方のブチが共和国軍のメカに撃ち抜かれて爆散した。
　しかし、ツバサの心には憎しみや悲しみといった感情は湧いてはこなかった。まだ幼すぎるという事もあるのだろうか、ツバサは未来の平和を願い、その為に戦っていた。

　バズーカとマシンガンをマウントしたブチは、的確な機動と正確な射撃で前に出てきた敵を次々と撃ち落していく。
　パターンを読まれないように常にランダムに動き回り、または急停止する。マシンガンの牽制射撃で敵の回避を誘導し、本命のバズーカの偏差射撃で敵を墜としていく――

<< ボクって才能あるかも >>

　とツバサが思ったのも束の間、油断したその瞬間、猛スピードで戦域に突入して来た機体があった。
　共和国軍の新型か――
　ニムによく似ているが、腕が四本もあり、継接ぎだらけの見た事もない異形の機体だ。
　あちこちに被弾を受けたその機体は最後の足掻きとばかりにツバサのブチへビームを放つ。

　ツバサの意識はその攻撃に反応したが、身体の反応が追い付かなかった。
　動力部を撃ち抜かれ閃光に包まれつつある機体。
　最後の一瞬に駆け抜けるのは楽しかった思い出と、未来への希望。

<< オトナになったら素敵な人と結婚して、平凡だけど幸せな温かい家庭を築きたかったな…… >>

　同時に制御を失った敵の機体がツバサのブチに衝突。
　二体は爆発し、砕け散った――