希望戦士ニャンダム・レクイエム｜リアクション

希望戦士ニャンダム・レクイエム

●宇宙要塞ジーマ・ネコ宙域　地球共和国軍　ツクヨミ艦隊

　古今東西、どんな軍隊にも暗部というものは存在する。戦いが破壊と死を伴う以上、それもまたやむを得ないものであるとされてきた――

　公国軍を追い詰めた共和国軍も、予想以上になりふり構わない公国軍の鬼気迫る反撃に、思わぬ痛手を受け、そう簡単には勝利を掴ませてはもらえない事を痛感せざるを得ないでいた。
　公国軍の必死の抵抗に業を煮やした共和国軍上層部は、とある艦隊に特別任務を下すことを決定した。その実、生きて帰る事の可能性など顧みられない絶望的な特攻作戦である。　

　ここにとある艦隊があった。地球共和国軍、ツクヨミ艦隊――またの名を『死神艦隊』と言った。
　その艦隊に配属された者は生きて故郷の土を踏むことが叶わないと言われる、死の部隊。
　どの搭乗員たちも家族や身寄りを失った者ばかり、上層部にとっては都合の良い捨て駒であった。

　今まさにその旗艦の艦橋で、最後の戦いへ向けた訓示が行われようとしていた。

「さて、我々は平和の礎として死ににいく訳だが、迷いがある者は脱出艇があるから、
　それに乗って逃げなさい……」

　艦長であるツクヨミ・タビガラス大佐（旅鴉月詠）の思わぬ言葉に、それを聞いた搭乗員たちの間にどよめきが起こった。
　だが、その声に対して、その場を去る者は居なかった。

「せっかくここまで来たんだ。公国に喰らわせないと先に逝った連中に顔が合わせられないぜ」

　皆、家族や仲間を失っても戦いを止めなかった者たちだ。覚悟はできているのだろう。

「まあ、この艦にいる時点で死に損ないの戦闘狂ばかりだろうが……ハッハッハ
　ただで死ぬのは勿体ないから、死ぬ前に多くの戦果をあげようか」

　そうして顔を見合わせ笑い合いながらもツクヨミは思った。共和国上層部の一部連中の腹黒さは知っている。結局どっちが勝っても一時的な平和に過ぎない。だが、その一時的な平和を目指すのもまあいいだろうと――

「さて、死地へ赴こう」