【らっかみおろし】第３区間：町から海へ｜リアクション

【らっかみおろし】第３区間：町から海へ

　例年以上の盛り上がりを見せる、らっかみおろしもいよいよ大詰めである。
　第３区間は、町からゴールとなる寝子ヶ浜海岸までのコースだ。

　第２区間をぶっちぎりの１位で通過したのは黒猫チーム。
　メイド服に派手なスカーフ、キンキラキンの冠の上にレインボーパンツをらっかみさまに被せたもはや原形を止めない人形を引きついだのはこの３人。褌をこよなく愛する元気娘の後木真央、猫鳴館の良心（？）自治会長の邪衣士、そして、猫鳴館のカオスの申し子こと骨削瓢。
（大丈夫なのか……このメンツで）
　一抹の不安がよぎる士をよそに、真央はにゃはは〜とご機嫌である。
「ふははは！　黒猫チームは圧倒的なのだ！　我が軍の勝利は確実なのだ〜！」
　水褌にサラシ、黒々『猫鳴館寮生惨状！』の文字の書かれた前掛けと幟を装備している。
「後木やっぱり褌なんだな……」
「もちろんなのだ！　このチャンスに褌の普及と猫鳴館のイメージアップをはかるのだよ！」
「むしろ誤解されるような……というか、参上の漢字が違う……」
「細かいことを気にしないのだ！」
「真央嬢は頼もしいねぃ。けど、その前掛け……いやに長くないかい？」
　瓢の一言に、ややっと前掛けに目を落とす真央。
「しまったのだうっかり前掛けと手に持つ小道具間違えたのだ即チェンジなのだ」
「不安だ……」
　不安の重くのしかかる士の肩を、瓢はぽんぽんと叩く。
「まぁまぁ邪衣はん。館の繁栄を願って参加したあっしら３人に怖いもんなんてないよぃ。それにとっときの策があるからねぃ」
「士ちゃんと瓢ちゃんも良かったら使うのだ？　おんぶ紐は調達してきたのだ」
　用意したのは、地下帝国の神『与作』人形が２体、これを真央と瓢がおんぶ紐で背負う。
　らっかみさまの人形は士の担当だ。男子が２名いるのでプラス20㎏の重りを追加された山駕篭を、持ち前の怪力を頼りに頭の上に持ち上げる。
「２体の偽人形によるかく乱作戦さぁ。本物は任したよぃ、邪衣はん」
「上手くいくといいんだけど……まぁ、参加するからには精一杯頑張るよ。みんなで１着を目指そう」
　描鳴館トリオの結束は如何に？
　圧倒的すぎるほどのリードと、必勝の作戦を武器に、黒猫チームは海に向かって前進開始！

　＊＊＊

　黒猫チームから大きく遅れて、第３区間に到着したのは白猫チームである。
　うさ耳カチューシャと眼帯、ポニーテールを後頭部に装着し、駕籠にネットカフェ眠り舎の広告ビラを貼付けた、なんとも神々しさより俗にまみれた感のあるこちらのらっかみさまを、３人の新たな担ぎ手が囲んでいる。

「どんなふうになってるのか心配だったけど、思ったよりかわいくて良かったねぇ」
　夢宮瑠奈はほっと胸を撫で下ろした。
　邪魔にならないよう髪は真ん中でひとつ縛りに、赤いスポーツウェアがよく似合っている。
「……でも、まだ派手さが足りないわね」
　桃川圭花は眼鏡の奥の瞳を細める。
「ふふふ、せっかくだから可愛く飾ろうと思っていろいろ持ってきたんだ♪」
　雨寺凛はそう言って、用意したひらひらのリボンときらきらのスパンコールで飾り付ける。
「凛ちゃんの飾り、かわいいなぁ。……圭花ちゃんのは、金と銀のボンボン……かな？」
「激安のディスカウントショップで買った割りには結構様になるでしょ？　……海に放り込むのに高いものはちょっと、ね」
　飾り付けを終えた人形は、可愛らしさとギラギラ感が大幅にアップ。
「……ふっ、我ながらセンスないわね」
　まじまじとそれを見つめていた圭花は、思わず吹き出した。
「まぁいいわ。後ろのチームが来ないうちに出発しましょ。黒猫と結構差がついてるけど、勝ちにいくわよ！」
「もっちろん♪　よーし、最終区間、盛大に盛り上げて勝っちゃうぞー！」
「うん、お祭りなんだし、楽しもうね。よろしく、圭花ちゃん、凛ちゃん」
　白猫チームも意気揚々とスタート！

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