月夜に囚われし姫君を救え｜リアクション

月夜に囚われし姫君を救え

「！　いけない！！」
　此方と武道は同時に缶とペットボトルをぶん投げる。
「こんなものっ」
　白鋼がそれらを切り払ってのけようとした……その時、派手な音を立てて爆発したのだ。サキリも宙太郎も既に範囲から逃れており、白鋼は見事に怯んだ。それを好機と見た複数の者が動き出す。
　最初に迫ったのは蛇那伊だった。けはいを感じ取ったのか白鋼は彼の攻撃を身体捌きでかわすも、次の一撃は交わしきれなかった。ナイフの背で殴りかかるも受け流され、間合いを詰められる。
（私の間合い、ね）
　気合と共に放たれる一撃に、白鋼はよろける。が、体制を整えて光線を放とうと拳を握った。蛇那伊はすかさず横に避ける。そして見えたのはサキリの姿だった。
「！　今だ！」
　視線の先にいたサキリは、タイミングを合わせて手鏡を向ける。反射される光線を食らった白鋼は、腕を氷付けにされる。そのチャンスを見逃すわけはない。
　気合と共に円がインファイト。拳を振るえば白鋼が氷付けになった腕でガードし、そのまま受け流す。果敢に挑むも、拳は固い両腕に防がれていく。が、ナイフは封じられているのだ。怖くはない。
「よけろ、桜庭っ」
　刀が言い切ったその時、彼の脳裏で撃鉄が落ちる。刀のろっこん『加速』の発動条件だ。目にも留まらぬ速さで風となり、刀は白鋼へと手刀を振るう。
「これで、終わりだ！」

　――この手が届くまで、凍てつけ、世界よ！！

　鈍い音と共に、刀の一撃が凍った腕にきまる。音を立てて割れた氷が月光に煌いて散っていく。もう一撃、拳を振るえば、吸い込まれるように鳩尾へ叩き込まれた。
「……ははっ、そなたらの力、実に面白い。参ったよ」
　白鋼は、この時漸く降参したのだった。

　戦いが終わり、一同は白鋼と向き合っていた。そして、つばめもまた、白鋼ときちんと話すため、一歩前に出る。
「つばめ姫、皆様がた。この度は私の無知故にこのような事に巻き込んでしまった。大変申し訳ない事をしてしまった」
　白鋼は静かにそういい、深々と頭を下げる。つばめはしっかりと白鋼の目を見て言った。
「結婚の申し出は受け取れないよ。私にはまだ結婚自体考えていなかったし、あんなやり方、こっちじゃ受け入れられないよ」
　その言葉に白鋼は表情を曇らせるも、つばめは笑って
「さすがにお嫁さんとか恋人にはなれないけれど、またこっちにきた時とかは案内できるよ」
　つばめがそう言って苦笑すると、白鋼は嬉しかったのか、少し笑いながらこう言った。
「ありがとう、つばめ姫。この世界の人間は、やさしいのだな」
　　どうにか和平ムードが漂い、他の者たちも安堵の息をつく。が、気を張っていた陽太と武道は何かに気づいた。
「何、しているのかな？」
「おにーさんがおしおきしちゃうよー☆」
　二人はすかさず動く。視線の先にいたのは、もちろん瓢とリア充＝スレイヤーである。瓢はケラケラ笑いながら走り、小麦粉を撒き散らす。それを止めようと武道が『スイ・マー』で狙う！　が、彼が手を打つより速く瓢の行く手を阻んだ者がいた。現在進行形でよっぱらったまんまの白虎、銀穣である！　背中にはうっとりと恍惚状態の真央がしがみついている。
「やめろ！　このままだと真央が危ない！！」
「目を放した隙に暴走なんて目も当てられないわね」
　修と蛇那伊が止めに入るも、瓢へとじゃれ付く銀穣。どうやら獲物と勘違いしたらしい。
「な！　なんで巻き込むんだよぃ！」
　辛うじて避けたものの、その爪がわき腹を掠める。流石に血は滲む程度なのだが、ひりひり痛む。身動きが取れない所を御用となった。
　が、しかし！　リア充＝スレイヤーとはもみ合いになる。陽太が放った粘土細工にちくちく攻撃されながらも、彼は叫ぶ！

　――リア充、爆発しろぉおおおおっ！
　――ボンッ！

　しっとの使徒の力（つまりはろっこん）『リア充爆発しろ！』により爆発がおき、その場にいる者たちは全員噎せた。だが、アフロになったのはごく一部のみで、その場にいる者のほとんどは無事だったという。
　綺麗にまとまりかけた所でのトラブルだったが、まぁ白鋼とつばめは無事であった為お咎めなしとなった。

　その後、月が衣装を見せて欲しいと願えば白鋼は考えた挙句後ほど資料を彼女に送る事にした。また、サキリが黒耀石のナイフに興味を示せば、
「このナイフは特注品でな、我が両親からの成人祝いなのだ。これをあげる訳にはいかぬが、そなたに合うナイフを後ほど贈ろう」
　という事になった。

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月夜に囚われし姫君を救え

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