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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
壊しておくれ、誠を帯びしこの身をどうか
・神楽坂 澪の場合
それにしてもすごかったなと、澪は胸の中で一人ごちた。
（さっきの、楪さんの動き……。僕も中学の頃は剣道部だったけど、あの動きはちょっとできないよな。思わず魅入っちゃったもんなぁ）
彼女の外見のせいもあったかもしれないけど、美しささえ感じる動きだった。そして何より速かった。敵が来れば自分も戦う覚悟はあったのに、その暇さえ与えられなかった。
（女の子に守られたってのもなんかなぁ……。せめて異変の原因を見つけて、汚名返上したいところだけど……ん？）
『……ない』
ふと、近くから声が聞こえた気がした。
（これは……）
心の声だと、すぐに澪は気付いた。自分のろっこんがいつも伝えてくる、誰かの隠れた思いだ。
だけど今は片目を押さえていない。そうしなければ、自分のろっこんは発動しないはずだ。
『……たくない』
また聞こえた。さっきよりも少しはっきりと。
（なんで……いったいどうなってる……？）
かすかな動揺を感じながらも、澪は片目に手をやった。そうすればもっとはっきり聞こえるかもしれないと、そう思ったから。
『見たくない……こんな光景は……』
思った通り聞こえる、いや伝わる声が大きくなった。なんだかひどく沈んだ、低い声だった。
『頼む……誰か……誰か私を……』
そう聞こえた瞬間、方向も判別できた。右。そこにある何かが、声を伝えてきている。
手を伸ばした。そこには薄闇があって、何があるのかはっきりとは見えない。その薄闇の中を、澪は手で探った。
すると、指先が何かに触れた。そしてその瞬間。
「えっ……」
いきなり、視界が明るくなった。そして、視界全体に光景が広がった。
最初に見えたのは、『誠』と書かれた旗だった。そして次には、旗の下にたたずむ大勢の人間が見えた。皆、刀を佩いている。そしてだんだら羽織を身にまとっている。新選組。間違いなかった。大勢の新選組が、『誠』の旗の下に立っている。
「これって……」
やがて光景が変わった。どこかの建物の中。そこで、新選組が戦っていた。昔の料亭のような、そんな場所で、刀を持った武士と戦っていた。新選組により、武士たちが斬り伏せられていく。やがて池田屋という文字も見えた。
また、光景が変わる。次の光景でも新選組が戦っていた。だけど、今度は新選組が倒れる姿だった。銃で撃たれているのだ。銃弾に当たって、だんだら羽織が倒れていく。
『……見たくない』
その光景の中で、また声が聞こえた。
『……見たくない。もう仲間が倒れる姿は、殺される姿は見たくない。そしてそれ以上に、新選組が罪もない人々に刀を向ける姿など、この島に住む年端もいかぬ子供たちを殺そうとする姿など見たくない』
心の声。いったい何が伝えてきているのか、まだ澪にはわからなかった。
『しかし、これもすべて私の責任だ。触れた者に記憶を見せる力など持った私の責任。それでも、あのカラスさえ現れなければ。この私の記憶を現実世界に映し出した、あのカラスが恨めしい。私はこんなことは望んでいなかった。ただ山中に打ち捨てられた刀でしかなかったのに、ここであの日、力を得たせいでこんなことになってしまった。そして、あのカラスに見つけられたせいで』
力。神魂か、と澪は思った。それ以外には考えられない。
『誰でもいい……壊してくれ。私を壊してくれ。もう見たくない。私が壊れてしまえば、もう見なくて済むんだ。もうこんなことは起こらずに済むんだ。頼む。誰かこの身をばらばらにして、そして二度と人の目に触れぬようにこの山の土に埋めてくれ。頼む。頼む……』
そう聞こえた瞬間、光景が元に戻った。
いや、違った。
澪の視界に映ったのは、数えきれないほどの木々だった。森のような景色が周囲に広がっている。
いや、間違いなくここは森の中だった。
「……蔵が消えた。いや、屯所自体が消えたのか」
櫻の声が、背後から聞こえた。
「なぜ急に……。そうか、もしかしたらここに現れた新選組隊士をすべて倒したから、屯所自体も消えて、元に戻ったのか」
「……たぶん、そうなんだろうね」
櫻に言葉を返しながらも、澪の意識は、今自分の手が触れているものに向いていた。周囲にあったものたちが消えても、それの感触はある。でも草に隠れているので見えない。
（触れた者に記憶を見せる……その記憶が現実に映し出された……。じゃあ、すべての原因は今、僕が触れているこれ……）
指に触れていたものを、しっかりと掴む。そうして草の中から出した。
「……なるほど。そういうことだったんだね」
そしてそれを見つめながら、澪はそうつぶやいた。
それにしてもすごかったなと、澪は胸の中で一人ごちた。
（さっきの、楪さんの動き……。僕も中学の頃は剣道部だったけど、あの動きはちょっとできないよな。思わず魅入っちゃったもんなぁ）
彼女の外見のせいもあったかもしれないけど、美しささえ感じる動きだった。そして何より速かった。敵が来れば自分も戦う覚悟はあったのに、その暇さえ与えられなかった。
（女の子に守られたってのもなんかなぁ……。せめて異変の原因を見つけて、汚名返上したいところだけど……ん？）
『……ない』
ふと、近くから声が聞こえた気がした。
（これは……）
心の声だと、すぐに澪は気付いた。自分のろっこんがいつも伝えてくる、誰かの隠れた思いだ。
だけど今は片目を押さえていない。そうしなければ、自分のろっこんは発動しないはずだ。
『……たくない』
また聞こえた。さっきよりも少しはっきりと。
（なんで……いったいどうなってる……？）
かすかな動揺を感じながらも、澪は片目に手をやった。そうすればもっとはっきり聞こえるかもしれないと、そう思ったから。
『見たくない……こんな光景は……』
思った通り聞こえる、いや伝わる声が大きくなった。なんだかひどく沈んだ、低い声だった。
『頼む……誰か……誰か私を……』
そう聞こえた瞬間、方向も判別できた。右。そこにある何かが、声を伝えてきている。
手を伸ばした。そこには薄闇があって、何があるのかはっきりとは見えない。その薄闇の中を、澪は手で探った。
すると、指先が何かに触れた。そしてその瞬間。
「えっ……」
いきなり、視界が明るくなった。そして、視界全体に光景が広がった。
最初に見えたのは、『誠』と書かれた旗だった。そして次には、旗の下にたたずむ大勢の人間が見えた。皆、刀を佩いている。そしてだんだら羽織を身にまとっている。新選組。間違いなかった。大勢の新選組が、『誠』の旗の下に立っている。
「これって……」
やがて光景が変わった。どこかの建物の中。そこで、新選組が戦っていた。昔の料亭のような、そんな場所で、刀を持った武士と戦っていた。新選組により、武士たちが斬り伏せられていく。やがて池田屋という文字も見えた。
また、光景が変わる。次の光景でも新選組が戦っていた。だけど、今度は新選組が倒れる姿だった。銃で撃たれているのだ。銃弾に当たって、だんだら羽織が倒れていく。
『……見たくない』
その光景の中で、また声が聞こえた。
『……見たくない。もう仲間が倒れる姿は、殺される姿は見たくない。そしてそれ以上に、新選組が罪もない人々に刀を向ける姿など、この島に住む年端もいかぬ子供たちを殺そうとする姿など見たくない』
心の声。いったい何が伝えてきているのか、まだ澪にはわからなかった。
『しかし、これもすべて私の責任だ。触れた者に記憶を見せる力など持った私の責任。それでも、あのカラスさえ現れなければ。この私の記憶を現実世界に映し出した、あのカラスが恨めしい。私はこんなことは望んでいなかった。ただ山中に打ち捨てられた刀でしかなかったのに、ここであの日、力を得たせいでこんなことになってしまった。そして、あのカラスに見つけられたせいで』
力。神魂か、と澪は思った。それ以外には考えられない。
『誰でもいい……壊してくれ。私を壊してくれ。もう見たくない。私が壊れてしまえば、もう見なくて済むんだ。もうこんなことは起こらずに済むんだ。頼む。誰かこの身をばらばらにして、そして二度と人の目に触れぬようにこの山の土に埋めてくれ。頼む。頼む……』
そう聞こえた瞬間、光景が元に戻った。
いや、違った。
澪の視界に映ったのは、数えきれないほどの木々だった。森のような景色が周囲に広がっている。
いや、間違いなくここは森の中だった。
「……蔵が消えた。いや、屯所自体が消えたのか」
櫻の声が、背後から聞こえた。
「なぜ急に……。そうか、もしかしたらここに現れた新選組隊士をすべて倒したから、屯所自体も消えて、元に戻ったのか」
「……たぶん、そうなんだろうね」
櫻に言葉を返しながらも、澪の意識は、今自分の手が触れているものに向いていた。周囲にあったものたちが消えても、それの感触はある。でも草に隠れているので見えない。
（触れた者に記憶を見せる……その記憶が現実に映し出された……。じゃあ、すべての原因は今、僕が触れているこれ……）
指に触れていたものを、しっかりと掴む。そうして草の中から出した。
「……なるほど。そういうことだったんだね」
そしてそれを見つめながら、澪はそうつぶやいた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2014年09月10日
- 参加申し込みの期限
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- 2014年09月17日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2014年09月17日 11時00分
