その場にいる者たちのほとんどは、ひどく困惑した表情をしていた。
無理もない。彼らは、というより場にいる全員がついさっきまで夕方の時間を穏やかに過ごしていたのだ。
それにも関わらず彼らがこんな人気のない山中にいるのは、不可思議な力によりいきなり集められたからだった。
「必要なことだけ話す」
場に集まった者たちに、言葉が向けられる。それをしたのは、彼らのそばにたたずむ一匹の猫だった。
テオドロス・バルツァという名の、普段はテオと呼ばれる、小柄な猫。
ただテオの言葉は、実際の声という形では出されなかった。その言葉は、場にいる人間たちの心に直接語りかけられる。
「ついさっき、九夜山の中に建物が現れた。それはこの島に存在するはずのないもので、建物の敷地内にも存在するはずのない奴らがいる。お前らでなんとかしろ。ダメージを与えれば消えるはずだ。武器は用意した」
その短いテオの説明に、何人かから戸惑いあるいは不安の声が上がった。しかし、テオはそれを無視して言葉を続ける。
「それと、おそらく異変の原因もそこにある。探れ。そして二度と同じことが起こらないよう対処しろ。わかったら、行け」
突き放すようなテオの言葉に、さらに戸惑いの声は大きくなる。それでもテオは取り合うつもりはないようだった。
しかし、せめて敵はどういう奴らなのか教えてくれ、という言葉にはさすがに反応する気になったようで。
そうしてテオは、もう一度だけ彼らに語りかけた。
「シンセングミとかいう奴らだ」
こんにちは、北見直弥です。
今回はバトルシナリオをお送りします。敵となるのは幕末史に鮮烈にその名を刻む剣客集団、新選組です。
相手が相手なので、下手をすれば大怪我すらしかねない状況です。体力や腕力、ろっこんの能力に自信のある方はともかく、そうでない方はくれぐれも慎重に行動することをオススメします。
それでは皆様のご参加、お待ちしております。
▼舞台
・現れた建物は過去の世界で実際に新選組が使っていた屯所です。(一応、史実の屯所の構造を想定していますが、新選組が生活していた場所というざっくりなイメージで構いません)
・敷地は広く、塀で囲まれています。入口の門を抜けた先には、隊士たちが寝泊まりする部屋などがある屋敷、稽古のための道場、蔵、中庭などがあります。
・蔵には刀や槍、竹刀、旗、樽、米俵などが置かれています。なぜか扉は鍵がかかっておらず、それどころか大きく開いています。まるで誰かを誘い込んでいるようにも思えます。
・屯所入口の門も鍵がかかっていませんが、身体能力の高い人ならば塀を乗り越えることもできます。
▼時間
・夕方ですが、まだ陽が落ちてはいないため、視界に困ることはありません。
▼武器
・テオにより、人数分の刀が用意されています。ただ使うか使わないかは自由です。
▼敵情報
・屋敷の中に、近藤勇と平隊士10名
・中庭に、土方歳三と平隊士8名
・道場に、沖田総司と平隊士7名
・屯所入口門に、平隊士2名
▼目的
・新選組隊士たちを全滅させる。
・異変の原因になった神魂を持つ『何か』を突きとめて、二度と同じことが起こらないような対処をする。
※以下はPL様のみ知りえる情報です※
▼その他状況説明、注意事項
・強制ではありませんが、コメントページを使い、事前に他の参加者とそれぞれの動き方を確認、相談しておくことをオススメします。
・隊士たちをすべて倒せば、屯所も消失します。しかし異変の原因である『何か』だけは消えずにその場に残ります。ただ戦闘が終わった頃にはだいぶ陽が落ちているかもしれず、暗闇の森中を探すとなれば、それは難しいことでしょう。
・新選組の面々とは言葉が通じます。しかし状況が状況なので、話し合いで解決はできないでしょう。
・新選組隊士たちは自らを取り巻く状況については知りません。なので今回のことは不逞浪士(幕府に逆らう武士)が襲撃してきたというふうに解釈します。
・異変解決のヒントとしては、原因である『何か』に触れることです。その『何か』を特定し、触れ、こうやって対処するというアクションがあれば解決に向かいます。特定はできなくても、手当たり次第にあれこれ触れていれば解決につながる可能性もあります。
・ただ、原因特定だけを考えて行動するのはオススメしません。戦いの場で敵から意識をそらすというのは、とても危険な行為です。
・原因への対処がうまくいかなければ、このシナリオはシリーズ化する可能性があります。