うみねこ１日店員求む｜リアクション

うみねこ１日店員求む

●手伝いはまだ終わらない？

　会計を済ませた時子は、帰る前に一口かき揚げを買った。
「あの……串を３本いただけますか……？」
　茂と美弥子と食べながら帰りたいと思い、レジ打ちをした総悟に頼んだ。
「いいですよ」
　買い食いは行儀悪いと思う茂だったが、かき揚げの美味しさと誘惑に負け、時子に薦められひとつ。
「食べやすいな。味も、うみねこで食べたものと同じだ」
「これなら女の子も買いやすいね。今度うみねこに行った時に買おう」
「今日は誘ってくれてありがとう、御巫。生徒達が考えた料理を味うことができたことは、良い経験だった」
「また食べたい味だったね！」
「おふたりにそう言ってもらえて……嬉しいです……。お誘いして良かったです……」
　うみねこの味を喜んでもらえたので、誘って良かったと思う時子だった。

　時間はあっという間に過ぎ、閉店時間に。
　店内、厨房清掃といった後片付けを済ませた後、寝子高生達は、やり遂げた達成感に満たされた。
「皆、お疲れ様。お先に失礼するよ」
　そう言って、神楽坂澪は先に帰った。
　総悟は魚戸家の留守も任されているので、今夜は泊りこむ。
「私もお泊りしたいところですが、お父様が怒っておりまして。最近、夜に行動しすぎだと言われていますから帰って来なさいと」
　天満七星は、父に心配かけさせたくないと帰ることに。
「臨時バイトだったけど……いい経験だったな。おじさんとおばさんの大変さが実感できたし」
　実際に働いたことで、魚戸夫妻のありがたみを実感した鴇波羽衣。
「大変でしたが、お客さんに喜んでもらえて嬉しかったです。皆さん、お疲れ様でした」
　ドジっ子なので転倒したり、包丁で指を切ったり火傷したりと不運な目にあったが、塔ヶ崎璃亜は最後まで頑張った。
「女性陣は、俺が家まで送る」
「お願いします、黒滝様。明日、また来ますので、楽しいことがあったら教えてくださいましね」
　黒滝竜也は、帰宅する女性陣を家の前まで送っていくことに。
「総悟ちゃん、明日、朝早いけど大丈夫か？」
「大丈夫ですよ、宇佐見さん。仕入れ、頑張りましょう」
「じゃ、俺様も帰るな」
　仕入のスケジュールを確認した宇佐見望月も帰ろうとしたが、戻ってきた澪にばったり。
　澪はコンビニで買ってきたお菓子とジュースを、手伝った皆と総悟に手渡す。
「総悟君、バイトご苦労様。誰かを思って行動するのは尊いことだね。今日は良いバイトだったよ」

　皆が帰るのを見届けた総悟は、店の戸締りをしようとした時。
「こんばんは。新メニューを作りにきました。泊まり込んで」
　お泊りセットと食材を持ってきた綾辻綾花が、駆け寄ってきた。
「泊まり込んで大丈夫？」
「問題ないので大丈夫ですからご心配なく。今日の残り物、ありますか？」
「探せばあるかも……」
　厨房の冷蔵庫には魚のあら、海鮮丼に乗せるイクラやウニ等が残っていた。
「これだけあれば作れそうです」
　三角巾とエプロンをつけ、手を洗った２人は、新メニューの試作にとりかかる。
　試行錯誤して作ったあら汁を、綾花と総悟が味見。
「濃くない味付けにしてみました。どうですか？」
「美味しいよ。これ、ケンゾウさんにも味見してもらう？」
「そのつもりです」
　新メニューの試作は、深夜まで続いた。

　翌朝。
「おはよー、仕入れに行こうぜー！」
　元気な望月に対し、総悟は目が充血している。
「総悟ちゃん、寝てないのか？」
「皆さんが帰った後、徹夜で伝票整理をしていまして……。帳簿はハルコさんがまとめてつけることになっていますので」
　新メニュー試作疲れで綾花が泊まり、隣の部屋で眠っていて気恥ずかしくなり眠れなかったとは言えず。

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