タオルケットが空を舞う｜リアクション

タオルケットが空を舞う

　その頃、旧市街の空では円は眠ってしまったにゃーくんを抱え、静かに漂っていた。夕暮れの中、気持ちよさそうに眠るにゃーくんに円は優しく瞳を細める。
「風に乗ったときはなんかどきどきしちゃったな。にゃーくん、楽しそうでよかった」
　視線の先には、我が家がある。円は穏やかな気持ちのままそこへと降り立った。

　星ヶ丘。無事に到着したジェレミアは感謝の気持ちを込めてすみを撫でてあげた。地上を好奇心いっぱいに眺め、耳やしっぽ、目を動かして楽しみ、おともだちとも遊んだからか、疲れてぐっすり眠ってしまった子猫。その表情は実に満足げで、思わず笑ってしまうジェレミア。
「今日は、とても楽しい体験が出来たよ」
　そう言って微笑んでいる一方、星ヶ丘寮へ戻った修は淡く漂う柑橘系の匂いに頭を悩ませていた。猫達は柑橘系の匂いを嫌うのである。
「……香りが抜けるまで干すか、脱臭するかだな……」
　さて、どうしようかと考えつつ調査しようと動き出す修。後日その話を聞いたジェレミアは動物にも優しい洗剤がないか一緒に探してみようかな、と思うのであった。

　と、そこで思い出していただきたい。
　恐らく今回の最高速度を叩き出したであろうあのペアの事を……っ！！

　絶叫しながら飛び続けていた沼田さんだったが、執を乗せたまま鎌倉へと向かおうとしていた。ところが、寝子島から出ようとしたとたん、かくんっ！　と方向転換。またスピードに乗っていってしまった。
（つまり、神魂の影響はここまでしか反映されないのか？）
　執が妙に冷静にそんな事を思っているうちに速度は落ち、ふよふよと執の家へと戻っていた。沼田さんはようやくほっとした様子であるが、すっかり湯冷めしてしまったようだ。大きなくしゃみをすると鼻をすすった。
「……これ、どうしよう。本当に」
　漸く帰ってこれた事に安堵したものの、執は小さくため息を吐いた。

　因みにこの後、沼田さんはというと……コンビニで執が購入したシャツとパンツ、執（の父親）から借りた衣服を纏ったがその後どうやって帰宅したかは謎のままである。

　――なんというか……乙！！

　後日、その日の事を見ていた担任（牛瀬）から「あのおっさんは大丈夫やったか？」と聞かれた執であった。
　あと沼田さんは見事に風邪を引いた。

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