タオルケットが空を舞う｜リアクション

タオルケットが空を舞う

起：飛んだのは、タオルケットだけじゃなかった？

　――シーサイドタウン

（これが原因……か）
　神魂探知機（という名の謎機械。ポンコツで何にでも反応を示す）を手に屑利執が呟く。（偶然）激しく鳴る音の先に、１回分と思わしき量が入った柔軟材の袋があった。『フワッシュ』と名づけられたこの柔軟材（に入った神魂）の所為かと思うと、ちょっと気になる。何が起こるのだろう、と考えていると、手にした柔軟材と同じ匂いが漂う。外を見ると……タオルケットが空を飛んでいるではないか！
「なるほど……？　もしかして、空が飛べるというのか？」
何を思ったか、執は懐からチョークを取り出す。そしてせっせかせっせか魔方陣を書き、念じれば彼のろっこん『降臨の儀』が発動。呼び出された鎌倉在住の地味なサラリーマン・沼田さんは……思いっきり悲鳴を上げた。

　原因：執に柔軟材を引っ掛けられたから

　因みに、沼田さんは腰にタオルを巻いただけのスタイルだったと付け加えておく。だって、入浴中だったんだから！！
　それはさておき、パニックになる沼田さんを観察する執だが……飛ぶ気配がない。丁度窓の外を飛んでいるタオルケットを見つめつつ、彼は何かに気づく。
「そうか！　洗濯をしなくてはならないのか！」
「えっ？」
　沼田さんが首を傾げたものの、その背中を押して浴室へと連れて行き、シャワーを使って貰う事にした。
　結論から言えば、その後急に浮かび上がった沼田さんに捕まり、執が空を飛ぶ。但しそれはある意味地獄へのフライト（？）だったのかもしれない。

（ど、どどどどうしよう！？）
　白石妙子は慌てていた。結論から言えば例の柔軟材を使った洗濯物を干している際、風に煽られてタオルケットが飛び、捕まえようとして現在に至る。急に空へと浮かび上がった身体に、妙子の脳は状況把握が追いつかない状態になった。
「これって結構高いわね……。落ちたら死にそう」
　冷や冷やしながら様子を見れば、タオルケットはふわり、と風に乗る。なんとか飛べそうだ、と判断すると少し心が落ち着いた。辺りを見渡せばタオルやタオルケットがいくつか飛んでいる。目の前をなんかおっさんらしき影が結構スピードを上げて飛んでいったりもしたが、概ねゆったりとしたフライトだ。少し深呼吸をした妙子は、自分の目の前に広がる光景に感嘆の息を漏らした。
「まるで街がおもちゃみたい……」
　ふわふわと浮かぶタオルケットにのって、妙子はゆっくりと飛んでいく。僅かに香った柑橘類の匂いに瞳を細めて、彼女もまた空の散歩を楽しみ始めた。
　因みに丁度下着を干そうとしていた所で飛んでしまったため、手にはそれが握られていた。これは見せられない、と妙子はどうしようか考えるのであった。

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