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8月の★ハッピーバースデー
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★八月五日
「うーん、どうしようかなー」
桜花寮の部屋で
詠坂 紫蓮
が何度目かの声を出した。机に上体を伏せていて横に向けた顔の先にはケータイが握られていた。そわそわとした指が決断を待っている。
「やっぱり更さんにメールしよう」
上体を起こした紫蓮はメールの文章を打ち込み、即座に消した。ポニーテールが右左と動いては止まる。考えた末に入れた文章は簡潔なものだった。これでいいよね、と言ったあとに読み直して、ようやく送信となった。
伊陸 更
は旧市街の鄙びたアパートで一人暮らしをしていた。バイトのない今日は自作の絵本の挿絵に精力を注いだ。今し方、完成した一枚を陽光が射し込む窓まで持っていって発色の状態を調べていた。
そこにメールの着信音が軽やかに流れる。更は黒いスカートのポケットからケータイを取り出した。送り主の名前を見て、なにかしら? と呟いて文章に目を落とす。
『譲にいさんの今日の誕生日はどうするんですか』
動揺した手が震えて絵を取り落としてしまった。急いで拾い上げて絵の表面に顔を近づける。
「……汚れては、いないようね」
表情が緩み掛けて、まだよ、と語気を強めた。急いで返信のメールを打ち込んだ。
『今日が譲君の誕生日なの? 紫蓮さんのメールで初めて知ったよ』
間を嫌って送信した。数分後に更をやんわりと追い込む文章が返ってきた。
『今日は二人で誕生日のお祝いをするんですよね?』
「事情は知ってると思うんだけど……」
緑色の瞳に長い睫毛が掛かり、深く沈んだ表情を作り出す。吹っ切れたかのように目を開いて文字を綴った。
『前に頼まれて彼女の演技はしたけど、今でも譲君とは友達よ。大切な友達ではあるけど、付き合ってるとかじゃないからね?』
更は熱い息を吐いて送信した。
「……本当かしら?」
ケータイの画面を見つめたまま、他人事のように口にした。
戻ってきたメールを見て紫蓮は表情を和らげた。
「あれ? なんでほっとしたんだろ」
自分の感情に疑問を持ちながらもメールの文章を入れる。
『じゃあ、一緒にお祝いしませんか』
返事を待つ合間にクローゼットに足を運んだ。色々と目を向けてノースリーブのブラウスを選び出す。
タイミングを計ったかのように返事が戻ってきた。
『いいわね。場所は私のアパートでどうかしら? 広いとは言えないけど独り暮らしだからゆっくりはできるわよ』
読み終えた紫蓮は、そうなんだ、と呟いて新たな文字を打ち込む。
『実は私、手作りの料理を譲にいさんにプレゼントしようとしてたんですよ。一緒にごちそうを作ってお祝いしましょう!』
送信して紫蓮の着替えが終わる頃、更から長めのメールが届いた。料理を作るに当たって必要な材料や器具が書かれていた。二人はメールの遣り取りで大まかな役割を決めた。
「なんか楽しくなってきたわ」
青いチェックのスカートを広げるように回ると、紫蓮は溌剌とした様子で部屋を出ていった。
小ざっぱりとした部屋の真ん中で更は足を伸ばして座っていた。力なく顔を上に向けて長い髪を振る。ほっとした表情を浮かべた。
そこにチャイムが鳴った。はーい、と明るい声で玄関のドアを開けると上気した顔の紫蓮が現れた。
「こ、にんにちは、更さん」
紫蓮はぎこちない笑みを作る。膨らんだビニール袋を両手で提げていた。
「だいぶ買い込んだようね。早く上がって休んだ方がいいわ」
「た、助かりますー」
更に案内されてキッチンにビニール袋を置いた。紫蓮は赤くなった掌を懸命に擦り合わせる。付いた皺を引き伸ばしているように見えた。
「喉が渇いたわよね? 冷えた麦茶ならあるわよ」
「貰います!」
コップに注がれた麦茶を片手で持ち、紫蓮は一気に呷る。飲み終わりに堪らないという表情を作り、大きく息を吐いた。
「生き返るわー」
ふらふらと部屋に戻るとぺたんと座り込んだ。隣に更が腰を下ろし、二人は足を投げ出した。開けた窓から心地良い風が入ってくる。
「のんびりしてられないよ。早くケーキを作らないと!」
思い出したかのように紫蓮は立ち上がった。更は余裕の態度で手を振った。
「そんなに慌てなくても大丈夫よ。部屋の掃除は終わっているし、装飾に関しても問題ないわ」
「飾りっぽい物が見当たらないんですがー」
紫蓮は訝しげな目で部屋を見回す。立ち上がった更はぽんと肩を叩いて、あとのお楽しみよ、と笑って言った。
「まずはケーキの生地を作らないとね」
「あ、更さん。さっきはごめんね。メールでヘンなことを聞いちゃって」
「いいわよ、気にしないで。それより、こんな可愛い二人の手料理が食べられる譲君って幸せ者よね」
更は笑ってウインクをした。
「ですよねー。じゃあ、腕によりを掛けて作りましょうか!」
「その前に譲君を確保した方がいいかしら。どこかふらっと出掛けられても困るし」
「私はケーキの生地を作っておくよ。キッチンを借りるね」
「お願いね。ボウルはキッチンの収納庫にあるわ。薄力粉は冷蔵庫の横。そこにサラダオイル油や調味料もあるから」
「わかったよ。この私に任せてね!」
右腕を曲げて出ない力瘤は左の指で押して補った。更は口に手を当てて、やめてよ、と笑いながら部屋の奥にいった。
旧市街の道を
諸星 譲
が愛用のカメラを片手に歩いていた。被写体と思えば瞬時にカメラを構える。その為、歩みは遅々として進まない。
「程々にしないとね」
譲は足を速めた。数分で更の住むアパートが見えてきた。
「こんな格好で来ても良かったのかな?」
ドアの前に立ち、ボサボサの頭を手櫛で整える。白いシャツの袖は下ろした。ジーンズの埃を適当に手で払ってから呼び鈴を押した。
ドアが開くと甘い匂いが譲を包んだ。
「なんか良い匂いがするね」
「忙しいんだから早く上がって」
更はさっさと奥に引っ込んだ。譲は鼻をヒクヒクさせながら、お邪魔しまーす、と機嫌よく入っていった。
「おー、すごい綺麗な部屋! さすがは女の子だね。それとも初めて部屋に上がったから、そう思うのかな?」
譲は音のするキッチンに目を向けた。忙しそうに動く更に混じって紫蓮がボウルに片手を突っ込んでいた。練るような手付きで真剣に打ち込んでいる。
「紫蓮ちゃんも来てたんだ。これってどういう集まり?」
答えが返って来ないので譲はそろそろと近づいていく。
「譲にいさん、そこに立つと暗いよー」
「そうだね、ここにいようかな」
「そこどいて! 早く叩かないと生地が縮むじゃない!」
アルミホイルの型枠に入れた生地を持って更が突っ込んできた。譲は辛うじて後ろに避けると肩身の狭い様子で口にした。
「俺は何をすればいいのかな?」
瞬間的に動きを止めた二人は振り向いて、何もしないで、と同時に声を上げた。
すごすごと部屋に戻ってきた譲は壁にもたれて座った。ちらりとキッチンの方を見て、凄く暇です、と呟いた。
キッチンには完成した料理の皿が並ぶ。日頃は目に出来ない量に更は満足の表情を浮かべた。
「ようやく完成したね。ケーキはどうします?」
冷蔵庫の方を気にしながら紫蓮が声を落として聞いてきた。更は近づいて耳元で囁く。
「料理のあとで出すつもりよ。その時にサプライズの装飾もお披露目するわね」
「なんか、わくわくするね」
「また隠し事かな」
待ち切れなくなった譲がにこやかな顔で現れた。更はオムライスの乗った大皿を押し付ける。
「もちろん、運ぶのを手伝って貰うわよ」
「俺の誕生日の宴だからね。喜んで手伝わせて貰うよ」
「今日の誕生日のこと、すっかり忘れてたくせにー」
紫蓮がむくれた子供を演じると、ごめんね、と人懐っこい笑みが返ってきた。
「べ、別にいいよ。本当に怒ってるわけじゃないし」
「そうなのか。皿のことは俺に任せてよ」
持てるだけの皿を持って譲は部屋に運んだ。
半ば呆れた顔で更が口にした。
「本当に鈍感よね」
「ですよねー」
紫蓮は苦笑で相槌を打った。残りの皿は二人で分担して部屋に運び、テーブルに全ての料理が出揃った。
「俺の誕生日祝いにしても、凄いご馳走を用意してくれたんだな。正直に言って嬉しいよ。二人共、ありがとう」
「譲君の誕生日だからね。これも全て、紫蓮さんの段取りの賜物ね」
「そ、それは褒め過ぎですよ。冷めないうちに食べましょう!」
「食べる前に皆で記念撮影だね♪」
譲は手早くカメラのセッティングを終えた。テーブルの料理を前にして三人は並んで座った。
「二人共、もう少し俺の方に寄ってくれないと、カメラのフレームに収まらないよ」
更と紫蓮は恥ずかしそうな顔をしてミリ単位で近づいた。仕方ないな、と真ん中の譲が左右に手を伸ばす。二人の肩を抱いて引き寄せた瞬間、持っていたリモコンでカメラのシャッターを切った。
譲は喜び勇んでカメラの画像を確認した。親指と人差し指で輪を作り、完璧だね、と二人に無邪気な笑顔を見せる。
「良かったわね。いただきます」
更が手を合わせると、譲は慌てて席に着いた。自分の前に置かれた料理を不思議そうな顔で見つめる。
「変わった形のハンバーグだよね。隣のニンジンもそうだけど」
「まあー、作ってる時にそうなって、特別な意味はないのよねー」
紫蓮は困った様子で笑う。譲の目は隣のオムライスにも向かった。
「このオムライスのケチャップも同じデザインだな」
「私のも紫蓮さんと同じよ! ただ、なんとなく頭に浮かんで、手が勝手に動いたって感じで」
「わかってるよ。二人の想う気持ちが形になったんだよな。戦地で危ない目に遭うこともあるけど、頑張って長生きするよ」
「あのー、譲にいさん? それってどういう意味?」
「この形は桃なんだろ。不老不死の仙果で有名だよな」
二人の目は一斉に譲の皿に向けられた。ハートの形は逆さまに置かれたことで確かに桃に見える。
「な、桃だろ」
念を押されて二人の真剣な表情は崩れ、譲を中心に和やかな食事が始まった。
「このハンバーグ、香辛料が効いてるね。添え物のニンジンの甘さがちょうどいいよ」
「譲にいさん、添え物じゃなくてグラッセっていうのよ」
「お、そうか。添え物のグラッセの甘味がいいね」
グラッセね、とやんわりと紫蓮は訂正して、スプーンで掬ったオムライスを食べた。
「卵がトロトロー。中身はチキンライスだねー。鶏肉から甘い肉汁が溢れてくるよー」
「これは美味いなー。卵が口の中で蕩けるぅ」
「自分の好きな物を作っただけよ」
満更でもない顔で更はスプーンを口に運んだ。
全ての料理を平らげた。満足そうな表情で手を合わせた譲は、ごちそうさまでした、と祈るように言った。その態度に二人は顔を見合わせて、お粗末さまでした、と答えた。
「最後の仕上げがあるから譲君は席を外してね」
「また隠し事?」
二人は譲をキッチンの隅に押しやる。
「わかったよ」
譲は見えないように背中を向けた。その間に更が冷蔵庫からケーキを取り出し、テーブルの中心にそっと置く。ロウソクは紫蓮と二人で立てて火を点けた。
「今から飾り付けをするから、紫蓮ちゃんもここにいてね」
「えー、私もですかー」
譲の隣に紫蓮も後ろ向きに立たされた。
「すぐに終わるから、見張り役もお願いね」
そそくさと部屋に戻った更は作業を開始。十分ほどで準備を終えて部屋の電気を消した。
「急に暗くなったんですけどー」
「もう来てもいいわよ」
二人は周囲を気にしながら戻ってきた。テーブルの上に置かれたケーキに譲は喜びの声を上げる。
「ケーキまで用意してくれたんだ。ありがとう、本当に嬉しいよ!」
その時、更は壁のスイッチを入れた。
部屋の中は静謐な海の底の光景に一変した。深くて青い色に赤い珊瑚が灯り、雄大な銀色の魚群が床や壁に渦を巻く。
紫蓮は天井を見上げた。蛍光灯を覆うのは重ねられたカラーセロファンであった。
「本当の海の底みたい。更さん、凄いよ」
「切り絵のイメージで作ってみたんだけど、上手くいったようね。これは譲君のプレゼント」
小さなカメラのストラップを譲は上の空で受け取った。ふふ、と笑った更が次の舞台に向かう。
深くて鮮やかな海の底。更が奏でるチェロの音に二人は聴き入った。海藻のように緩やかに揺れて、厳かな時間は過ぎていった。
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ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
30人
参加キャラクター数
31人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年08月30日
参加申し込みの期限
2014年09月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年09月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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