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―― make a start ――

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Round1【AM10:00】

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【鼻岬洞窟前】

　既に５つの探検隊の姿はなく、洞窟前には無事に持ち帰れる事を期待する者達の姿だけが残されている。
　入り組んだ迷路の様な洞窟内で、探検隊に与えられる時間は３時間。
　これを過ぎた場合、侵入者を拒むように中に居る全ての者達をこの場所へと吐き出すように移動させる。

　その前に、彼等はお宝である各種像を持ち帰られるのか？

　洞窟前に集まった者達は、一様にその話題で盛り上がる事となっていた。

【Ａ１：洞窟上部ルート】

　入口から枝分かれした道を通り、地図上の最上部に当たる通路に到着した探検隊の一組はそれなりの広さがある、開けた場所に到着していた。
「いやぁ、ホント暗いよね。ここ」
　ランタンの弱い光に照らされた空間を見ながら、日暮 ねむるは共に来ている探検隊のメンバーに対し声を掛ける。
「あぁ。これが消されたら、迷うのは間違いないだろうな」
　広場を調べた後、壁に掛けられたランタンを確認しながら、メンバーの一人である御剣 刀はねむるに返事を返す。
　ランタンを弄る刀の腕には、青色の紐が結ばれている。
　他の探検隊も同じように腕に各種の色の紐を結んでおり、これが誰が仲間であるかを示す目安になっていた。
「夏によろしく、案外幽霊なんてのも出るかもしれないさね」
　ケラケラと笑いながら、最後の一人である霧谷 朧は、羽織っている夏には余り似つかわしくない白衣の様な長袖のコートの袖で手を隠し、幽霊のように見立てながら二人に対して口にする。
「幽霊ならいいんですけどね。それよりも、罠の方が厄介ですよ」
　実体が無い代物程度であれば、多少驚く可能性はあるがそれだけである。
　ねむると刀は、実際に対処出来ない物の方が怖いと揃って口にしていた。
「そうさねぇ。入口に集まってたのが色々言ってたのは、俺も聞いているさ」
「えぇ。宝の場所が記された地図は持ち込んでますが、罠がどこにあるかまでは書いてませんからね」
　各探検隊共に内部の地図は持っているが、その中でも刀達ともう一組の探検隊は宝の場所が記されたものを入手していたのだ。
　――とは言え、その場所は３つもあり、実際にはどれが本物であるかは書いていないのだが。
「じゃ、とりあえず先に話し合った通りに」
　その為に、ねむる達は初めから宝を探す為に別々に行動を起こすつもりで居たのだ。
　加えて――おそらくこの中に潜んでいるかもしれない守護者と呼ばれる者達を警戒する為に。
「そうだな。じゃあ俺はこっちに」
　だからこそ、互いが向かう目的の場所は伝えていない。
　ねむると刀がそれぞれの方向へと足を向けていく中、朧はその様子を観察していた。
「――なるほど、二人共別々にってわけか」
　疑うのであれば、初めから分かれて行動すればいい。
　それが二人が下した判断だと理解した上で、朧はそのままねむるの後に続く形で足を進めていた。

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【移動確認】
Ａ１→Ｂ１：日暮 ねむる 霧谷 朧
Ａ１→Ａ２：御剣 刀

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【Ｂ１：洞窟上部ルート】

　朧達と通路を挟み、隣り合った位置にも同じように広間は存在していた。
「まったく、妙な虫が居なければいいんだが」
　腕に巻かれた赤色の紐を揺らしながら歩く八神 修は、先ほどから視界の端にカサコソと動く物体を捉えていた。
　こちらに危害を加えない限りは特にどうするわけでもないが、正直言えば修にとって、物体――虫は苦手な部類であったのだ。
「えー、いいじゃないですかー。可愛いですよー」
　修とは対照的に、それらの虫に興味を示しつつ、現生物部の部長である屋敷野 梢は答える。
「悪いが、それは理解出来ない」
「むむ、それは生物部として感化できませんねー……って、おぉぅ！？」
　手近に居た小さな虫を見つけ、梢がそれを指さす。
「メクラチビゴミムシですよ！ こんな所にも居るんですねぇ……」

「なんだ、その酷い名前は……」

　三重揃った嫌がらせのような名前を口にした梢に、修が苦笑に近い表情で答える。
「まぁ、名前は酷いですよねー。でもこれって今はあんまり見かけないんですよー」
　虫のウンチクを語りつつ、梢の視線はそちらに向けられる。
　広間の捜索がある程度片付いた中での、ちょっとした発見に喜びを見せる梢に対し――二人と共にこの場に来ていた後木 真央が少しばかりもじもじと体を動かしていた。
「どうかしたのか、真央」
「うー……修ちゃん、梢ちゃん、ごめんちょっとトイレなのだ！ 先行っててなのだっ！」
　修の問いにパッと顔を上げたかと思えば、真央はそのまま進路上にある通路の一つに駆け出していく。
「待て、真央！ ここにトイレなんて――」
「……ないですよねー。とはいえ、もう行っちゃいましたか」
　足早に駆け出した真央を止める事が出来ず、既に真央の姿は二人の視界から消えていた。
「少し待ってみます？ それとも、先にいきましょーか？」
「……先に行こう。真央が自分で話した事だしな」
　普段の真央とは様子が違う。
　修にとっては、同じ探検隊となった際にその少しばかりの異変は感じていた。
　――そして、それは梢も変わらない。
　誰が裏切っているのかが分からない以上、その小さな異変は疑うべき代物であったのだ。
　梢達の探検隊が持ち込んだランタンを、今は修が持ちながら二人はそのまま目的の通路へと歩き出していく。

　二人がそのまま通路の先へと姿を消していく中、真央はぴょっこりと先ほど向かった通路から戻り、広間へと顔を出していた。
「ふー、二人共行ったのだ。がおー、ちゃんと分かったのだ？」
　ぶみゃんと一つだけ鳴き声を口にし、真央の腕の中には先ほどまで居なかった一匹の猫――がおーが姿を見せていた。
　姿を隠している間に、がおーにはこれからやるべき事をしっかりと吹き込んでいる。
　――ただし、それをしっかり理解しているかは、イマイチ不明ではあるが。
「じゃあ行くのだ。がおーもしっかりやるのだ！」
　ぐっと手を握り、真央はがおーと共に隠れながら二人の後を追う形で通路へと向かい歩きだしていた。

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【移動確認】
Ｂ１→Ｂ２：八神 修　屋敷野 梢　後木 真央（がおー）

【ろっこんノ使用確認】
後木 真央：残回数０

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【Ｃ１：洞窟中央ルート】

　上部と下部、それらの丁度間となる広間では元気な声が響いていた。
「しっらべよぉ～、ふしぎふしぎなたのしいことぉ～♪」
「なんっでもっ調べよぉ～。それが僕達探検隊さぁ～♪」
　腕につけられた紐の色は緑色。
　教育テレビで流れていた歌を一緒に楽しく歌いながら、小島 海美は八十八旗 信彦と共に広間の探索を行う。
　信彦に対し、海美は性格からかすぐに懐き、信彦もまたそれを快く受け入れ、こうして仲良くなっていたのだ。
「それ行け悪者、正義の探検隊を叩き潰すのだぁ～♪」
　そこに、横からまったく関係ない歌詞を口ずさみ、骨削 瓢が歌の輪に入っていた。
「もー、ちがうよ瓢くん！ そこはね――」
　瓢が間違った歌詞による合いの手を入れつつ、それを海美か信彦が直す、と言った形で比較的仲良くこちらの探検隊は探索を続けていた。

「ふぅむ、ここには特に何も無いか」

「ざんねんざんねん。でも、もっともーっととおくまで行けばあるかな？」

　こっくりと横に首をかしげながら、海美が信彦に答える。
　三人は１５分ほどで広間の大半を調べ終え、今はこの二人が先に続く通路の確認を行っていた。
「はっは、宝探しはまだまだ始まったばっかりさ。楽しくいこうじゃないかぃ」
　小ぶりの空の袋を１つ手に持ちながら、二人の後ろから姿を現した瓢が、それを海美に差し出す。
「ありがと、瓢くん！」
「なんのなんの、ちゃんと約束は守るよぃ」
　薄く考えの読めない笑みを浮かべる瓢から、海美は袋を受け取り、その中に地面の砂を入れ始める。
「おぉっと、海美ちゃん、俺も手伝うぜ！」
「うん！ ありがとー、信彦おにいちゃん！」
　さらさらとした砂を袋一杯に詰め、それが一杯になった事を確認し、三人は目的の通路へと足を進めていく。

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【移動確認】
Ｃ１→Ｃ２：小島 海美　八十八旗 信彦　骨削 瓢

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