みんなで「闇鍋」！―食とは何か？―｜リアクション

みんなで「闇鍋」！―食とは何か？―

「御剣刀くんの番だ」
「俺か」
　煮詰まってだんだん濃くなってきたカレーの香りを感じながら、刀は鍋に箸を伸ばした。
　ずっしりとしたボリュームの、とぐろを巻いた何かが姿を現した。
「私が持ってきた蛸足だな」
　淡々と言ったのは月詠だった。
　すわ蛇か、とも思った刀は、ホッと息を吐いた。
「具材としてはハズレではないんだろうが……だいぶ大きくないか？」
　修のコメントはもっともで、ミズダコか何かなのか、非常に大きい。
「食事とは他の命を貰う行為だ、残す事は考えられない！　意地でも全部食うぞ！！」
　食いしん坊バンザイな台詞とともに、がぶり、とかぶりつく刀。
　弾力があり、蛸足自身からも出汁が染み出てくる。
「あれ？　美味い？　これ美味いよ！」
　とガツガツ食べる刀。
　しかし噛みきれるかは別の話。
「んぐっ……ぐぐぅっ！！！」
　と、喉につまらせた。
「刀ちゃん……期待を裏切らない男なのだ……」
　真央がうんうんと何かに頷く。
　みゆきが慌てて水の入ったコップを差し出した。
「ふぅ……焦った……ありがとう」
　みゆきに礼を言って、一息つく。
「美味しいご飯は良い。皆で食べると更に美味しいと思う」
　コップをテーブルに置きながら、刀は言った。
　うんうん、と何人もの参加者が頷いた。
　刀は博士に視線を移し、
「味を分析するセンサーとかあるんだろうし、料理を味わえる装置を作るのに挑戦しても良いんじゃないか？」
「うむ。実は試験中でね。後はクオリアの問題だけだ」
　クオリアとは日本語で感覚質と呼ばれる概念のことである。
　視覚を例に簡単に言うと、イチゴを見た時に個々人の心に浮かぶ「赤さ」のことである。
　これに付随する問題は、哲学的にも物理学的にも極めて難しい問題の1つなのだが、博士は詳しくは語らなかった。
　刀もそれほど気にした様子では内容で、
「βも皆と一緒に色々な事が楽しめるようになると良いな。β自身の欲求が成長する切欠になると思う」
　とだけ言った。