【ネコミケ】行かねば。フツウに大変なネコミケ＠１日目！｜リアクション

【ネコミケ】行かねば。フツウに大変なネコミケ＠１日目！

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初島優に更衣室前まで連れて行かれ、浮舟久雨の表情は強張った。
「待て。手伝うとは言ったが、まさか被写体か！？」
だが衣装は――と戸惑う彼女に、優はおもむろに取り出した衣装を差し出す。
「はいこれ！」
その衣装に、久雨は見覚えが。そう、それはいつだったか魔法将女を名乗った時の服！
「ッ！？　何故ある！？」
「あるものはあるのさ！　急いでこれに着替えてきて！　さあ急いでハリー！　ハリー！　ハリー！」
思いっきり急かされて、更衣室に押し込まれた。

パタン、と閉じた扉の前。
優が乾いた視線で見下ろすのは、手元に残ったもう一人分の衣装。
予備？　衣装換え用？
いいや、違う。
その衣装は、"優の分"の魔法少女コスだ。
久雨の魔法将女衣装は、コスプレ部に作ってもらったもの。
当然タダで作ってもらえるわけがなく、優はその対価を支払わなければならなかった。
その対価とは。
ネコミケでこの衣装を着てコスプレ参加し、その写真を提出するということ……！
フッ、とニヒルに口角を上げた優。
そ顔に浮かぶのは、覚悟を決めた男の表情だ。
「さあ俺も……着替えようか……」
決然たる足取りで、優は向かう。
男子更衣室へ……。

◇
確かに。
確かに姉のことは好きだし、姉の為に仕事の手伝いはしたいと思っている。
だけど、だけど。
「なんでネコミケでこの格好で仕事をしなくてはいけないんですか！？」
矢萩咲は、『萩屋』の女子制服の裾を掴み叫んだ。なおポニーテールは解いており、いつもとはまだ違う印象だ。
しかも今回の彼女の役目は、萩屋の出店の一日店長。
一応、実務は副店長の先輩がやってくれる。
とはいえ。
とはいえだ。
辺りを見回す咲。
「この場所の雰囲気は――破廉恥です！　風紀が乱れます！　生き地獄です！」
ひどい言われようである、ネコミケ。
不意に脳裏をよぎった推測に、ハッとした表情になる。
「……クッ！」
この仕打は、もしかしてアレか。
この前、甘味の過剰摂取を禁止したからか！？
「こうなったら……！」
ゆらり、と咲の周囲を黒い気配が覆う。
その様子に、萩屋の店員達は悟る――これアカンやつや。
「こうなったら、咲のろっこんで会場をぶち壊してでも！」
青ざめ、焦りの表情で駆け寄った副店長が、後ろから羽交い絞めにして抑えこんだ。
「ああっ！？　何をするんですか！　田中先輩！」
それはこっちの台詞である。
こんなところで彼女のろっこん『メガエラ・フォース』が発動したら、一体どうなることか。
というか、負の感情の蓄積が必要なろっこん撃てるほど嫌なのネコミケ！？
しばらくジタバタし続けていた咲だったが、やがてぴたりと動きが止まる。
表情に浮かぶのは、諦めの色。
「……仕方ありません。接客頑張ります……」
肩を落とし、大きくため息を吐いた。
（それにしても、何か視線のようなものを感じるような……）
そっと肩を抱く咲。
なんだ気味が悪いが――仕方ない、目の前のことに集中しよう。