全員強制緊縛Day｜リアクション

全員強制緊縛Day

◯
　その日は空がいい色をしていた。
　澄んだ、青い、遠い、透明、広い、明るい、涼しげ、楽しそう、どこまでも、綺麗。
　そんな空を駆けまわるように、たわむれるように雲はあちらこちらで輝いている。
　小山内海は今日もスケッチブックを持って、そんな空を描こうと神社の階段を登っていた。
　今日はしんと静まった神社から見える空も、楽しそうに見えるのだろうか。
　それとも神社から見ると、また違った顔を見せてくれるのだろうか。
　想像するだけで、海の世界は遠く深く、どこまでも広がっていった。
　ところが――神社の境内には、お尻を突き出し倒れこんでいる夕鈴翼の姿があった。
（つ、翼ちゃん！？）
　その姿はどう見ても尋常じゃない。
　まさか誰かに、イタズラされたのだろうか……？
　海の胸がサッと冷えていく。
　海は慌てて駆け寄り、翼の顔を覗きこんだ。
「……お姉さん……！」
　海を見た瞬間、翼の瞳にじわりと涙が滲む。
　いや、既にもう泣いていたのだろう。またこみ上げてきたようだった。
　海は倒れたまま起き上がれない翼を抱き起こして、
『だいじょうぶ？』
　海は急いで、けれど翼を不安にさせないような大きくしっかりとした文字をスケッチブックに書いた。
　その文字を見た途端に、翼の涙は引込み、今度は恥ずかしそうにもじもじする。
（……翼ちゃん？）
　海が小首を傾げ、根気よく翼の目を見つめ続けると――
「じ、実は……、縄跳びの練習してたら、転んじゃって、絡まっちゃったんです」
　と翼は経緯を語ってくれた。
　にわかに信じがたい話だった。
　ぶっちゃけてしまえば、どうしてそうなった、と言いたくなるようなそんな話だった。
（……でも、助けてあげないと）
　海はその意思をスケッチブックに示す。
「……ありがとう、ございます」
　翼がホッとしたように表情の強張りを解いた。
　海もまた、翼のこの姿が他人の悪意によるものではないと聞いて内心安堵した。
　ホッとすると同時に、海の視線は縄の先端部分――翼の谷間に釘付けになった。
（……おっきい）
　縄のせいでさらに誇張された胸は、とても年下の、小学生のものとは思えない。
　大きくて、綺麗なまんまるで、柔らかそうで……まだブラジャーをつけていないせいか、ほんのりと――
（……っと今はそれよりもほどいてあげないと！
　ええと、ここがこうで……）
　海はさっそく縄に手を掛ける。がびくともしない。
（とりあえず、縄を伸ばしてみようかな？）
　縄の先端部分で海は長さを調整していく。
　そうすることで翼の胸を締め付ける部分にいくらかゆとりが出来てきた。
（これで、あとはこっちを……）
　そのゆとりに手を入れて、海が解いていこうとすると――
「ッぁ！」
　翼が小さな悲鳴を上げる。
（あ、変なところ触っちゃったかな？）
　ごめんね。軽く頭を下げて謝ってから、海は続ける。
　だが。
「ふぁッ！」
　すぐにまたそんな声を上げた。
『そんなにうごくと、ほどけないよ？』
　海が小さく抗議すると、
「だ、だって、お姉さんの手があたって……くすぐったいんですよ」
　と翼は首をすくめた。
　こうなったら。
　ちょっとくすぐったくても我慢してもらうしかない！
　そうして海は大胆に翼の身体をまさぐり、縄を解こうとする。
（こっちがあれで……）
「ふ……ぁあ、そこ、あはは、ン、っふぅ、駄目、駄目ですぅ～！」
（ん？　解けないなぁ……じゃあ）
「きゃあッ！　なんか、変な感……ぃッ！　ひゃ、あはは！！」
（って駄目！　そんなに動いたら！！）
　この時、海が駄目だと声を上げることができればこんな悲劇は起こらなかったかもしれない。
　だが、現実は残酷だ。
　翼が暴れたせいで、小さな身体の海はあっけなく体勢を崩した。
　そして――
「お、お姉さん！」
　海は、翼を押し倒すような形で（あるいは翼の胸に埋まる形で）倒れこんでしまった。
　そして同時に、脱げた靴と縄跳びによって、海も動けなくなってしまった。
　どうしてこうなった！