大きなあくびをして、ひとり歩いている
笹暮 真秋。
真秋の細めの肩の上に、仔猫のぬいぐるみがもたれかかっている。
彼らは、桜花寮の裏手にある桜川のあたりをぶらぶらと歩いていた。
「……もう秋だねえ」
動かない仔猫に真秋は語りかけた。
色素の薄い柔らかめの髪は、秋の穏やかな光を弾いて輝いていた。
「……あー、こんなのんびり過ごしたいなあ」
川面に、ひとひらの葉が舞い落ちる。赤くなりきれていない、小さな葉だった。
風が吹くと、一枚どころか数えきれない葉が、彼を追いかけて川へ飛び込んでいく。
水が苦手な真秋にしてみれば、川へ落ちていく彼らは哀れで仕方がなかったが、だからといって手を伸ばしてすくい上げることはなかった。
「……そろそろ戻ろうか」
それでなにか涼し気なものでも食べよう。
そうしてくるりと踵を返したその時、肩に乗せていたぬいぐるみがぷらんと宙にぶら下がった。
肩から滑り落ちた際に、ぬいぐるみのほつれがジャージのジッパーに絡みついたようだ。すぐに解いてやろうと真秋が細い指を滑りこませるが――
(……ん?)
解けない。手先が器用な真秋がどれほど頑張っても、そのほつれが解けることがなかった。
なんとなく違和感を覚える真秋だったが、
(……まぁ、いいや)
と解こうとするのをやめてしまった。
ポケットには携帯裁縫道具があり、それを使えば切ることもできるはずなのに。真秋は面倒臭がってポケットからそれを取り出すことをしなかった。
(……寮に戻ってから、ほつれも縫い直そ)
ぷらんと垂れ下がるぬいぐるみを抱きしめて、真秋は自室に戻るためにふらふらと歩き出した。
――だから、まだ彼は気がついていない。
神様の欠片が引き起こした、いたずらめいた騒ぎに。
結んだものが離れなくなってしまったという事実に。
登場して下さいました笹暮 真秋さん、ありがとうございます。
ガイド上で困った状態になってしまいましたが、
違うシチュエーションで始めることも可能ですのでご安心下さい。
*概要*
『結んだもの』が解けなくなりました。基本的には切り離すこともできないようです。
その上かなり広義に解釈されるようです。
例えば、髪を『結んだ』リボンが解けなくなったり、遊びのつもりでふたりの手首に『結びつけた』玩具の手錠が解けなくなったり、ガイドであるように絡みついて『結び合わさった』ほつれが解けなくなったり。
※多少強引でも『結んで』さえいればOKです。こんなのもありなのか!? というようなアクションもお待ちしております。
事件を解決するために奮闘するもよし、事件に振り回されるもよし、事件をうまく利用するもよし。
楽しい1日を送って下さい。
PL情報
例のごとく、神魂の効果は1日過ぎれば元に戻ります。
(結んだものを離せるようになります)
もちろん時間経過以外で事件を解決する方法もありますので、それを探して奮闘してもらっても構いません。