ひまわりと『向日葵』｜リアクション

ひまわりと『向日葵』

◆
「このひまわり凄いワ！　ワタシや恩センパイよりずーーっと大きいノ！！」
背丈の倍くらいはあるひまわりの隣で、御薗井Ｅセレッソはめいっぱい手を伸ばしてぴょこぴょこ跳ねる。
三つ編みの先も、動物の尻尾のようにぴょこぴょこ。
麦わら帽子にオールインワン。
全体的にかわいく纏めつつも動きやすい服装は、いつも元気なセレッソにはよく似合っていた。
「ホントねえ。ひまわりってこんなに大きくなるものなのねー」
早坂恩は、セレッソとひまわりを微笑ましげに見比べる。彼も今日は動きやすい、でもきちんとした格好だ。
「大きいだけじゃなくて、とっても綺麗よね。花の黄色がとっても鮮やか！」
特にセレッソの真っ赤な髪と並ぶと、目が覚めるよう。
なんだか、見ているだけで元気が湧いてくる。
「ねえねえ、恩センパイ」
くいくいと、セレッソが恩の服の裾を引く。
「ひまわり畑に潜ってみたいノ！」
「あら、楽しそうね！　でも、迷子になっちゃったりしないかしら？」
なにせセレッソはもちろんのこと、恩も余裕で埋もれる高さのひまわり畑である。
かくれんぼなんかすると楽しそうだが、迷子になるとシャレにならない。
うーん、とセレッソは少し首を傾げて考える。
やがて一つ思い付いた表情で、ぽんと小さく手を合わせる。
「見えなくなっちゃったらセンパイの事呼ぶから、センパイもワタシの事呼んでほしいワ！」
その提案に、名案ねと恩は微笑む。
そうと決まれば、早速ひまわり畑へ！
恩の思っていた通り――セレッソの赤く綺麗な髪は、ひまわり畑の一面黄色の中ではとても鮮やかに映える。
「やっぱり綺麗ねえ」
それに、太陽に向かって背を伸ばす向日葵は、元気いっぱいのセレッソに似ているようで。
「うふふ、誘ってみて正解だったわ……って、あら？」
惚れ惚れしていたら、早速見失った。恐るべしひまわり畑。
「セーレッソちゃーん！」
呼んでみると少しの間を置いて、
「めーぐーみーせんぱーい！！」
元気な声が返ってきた。
「セレッソちゃん、こっちかしらー？」
ひまわりをかきわけて、声のした方へ。
「えへへー！　こっちナノ！」
声が大分近い。
「よーし、ここね！」
ひまわりの間から顔を覗かせる。
居ない。
「……と見せかけてこっちナノ！！」
後ろから声。振り向けば、セレッソが顔を出していた。
「いつの間に回り込んだのかしら！」
くすくすと恩が笑みをこぼすと、セレッソもつられて満面の笑みを浮かべる。
「かくれんぼだかおにごっこだかわからないわネ！」
「ふふ、確かにそうね」
不意に、ふらりと襲う立ち眩み。
恩は座りこんでしまう。
「えっ」
セレッソが目を丸くする。
「わー恩センパイ？！？！　具合悪いノ？　大丈夫？　大丈夫なのカシラ？！」
「陽射しのせいかしら……」
ちょっとばかり、具合が悪くなってきてしまったようだ。
（……そういえば、帽子をかぶってくるのを忘れていたわ）
このくらいならきっと大丈夫だなんて、楽しくてついうっかりしてしまった。
元々、身体は弱いのに。
（えっとーえっと……こういう時どうしたらいいの……うぅ……）
大慌てのセレッソ。
思わず携帯を取り出してしまうけど、一瞬画面を見てすぐにしまった。
こういう時は、ええっと――
「涼しいところに運ばなきゃナノ！　恩センパイ立てるカシラ……ワタシ恩センパイをおぶっていくワ！！」
混乱のあまり、無茶なことを言い出すセレッソ。
「セレッソちゃん、流石にそれは厳しいんじゃないかしら……気持ちは嬉しいけど」
身長差は２０センチ。おぶっていくのは無理がある。
「と、とりあえずあそこのお店でお水とか貰ってくるノ！！」
ならと指さしたのは、ひまわり畑の向こう側にあるはずの甘味処。
「ひまわりを陰にして休んでてネ！」
少しでも陰になるようにと、麦わら帽子を恩に被せる。幸い、背の高いひまわり達もうまく陰を作ってくれている。
「……ありがと、セレッソちゃん」
ここは彼女の介抱に甘えよう。……少し、格好悪いけど。
「お店で助けてくれそうな人がいたら呼んでくるワ！」
大慌てで、セレッソはひまわり畑を来た方向へ戻っていく。
（こういう時、頼りになるパーパがいてくれたら……）
それでさっきも、つい携帯を取り出してしまった。
けど、なんでも助けてくれるわけがない。
だから、
（自分で頑張らなきゃ……恩センパイを助けなきゃ……）
そう思えば思うほど、足はどんどん速くなっていった。

この後、店に居た人達の手助けもあって事無きを得たとかなんとか。

このページにイラストを設定する

ひまわりと『向日葵』

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧