ひまわりと『向日葵』｜リアクション

ひまわりと『向日葵』

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金剛優芽からお誘いを受け、燕城寺智慧は『向日葵』にやって来た。
（ひまわり畑の側に建つ甘味処ですか、中々に風情のあるお店ですね）
普段、智慧は商店街以外にはあまり買い物に出かけない。
だから、こんなお店があるとはまったく知らなかった。
（今日誘ってくれた金剛さんに、感謝しなくては）
急で少しびっくりはしたものの、こういう素敵なお誘いはありがたい。
「わわっ、メニューも色々なものがあるんですね～！」
どれにしようか目を輝かせながら、お品書きを眺める優芽。
「智慧さんは何にします？」
「そうですね……」
智慧も甘味処なんて久方ぶりなもので、何を頼もうか目移りしてしまう。
「……あの、ひまわりの種というのは食せるのでしょうか？」
「炒って食べたりできる、って聞いたことがあるような……あっ、ここに書いてありますよ！」
優芽が指さしたのは、クリームあんみつの説明部分。
「あっ、ホントですね。……アイスの添え物に、ひまわりの種の焼き菓子を使ったクリームあんみつですか」
たまの贅沢、目新しいものを試すのもいいはずだ。
「では、これと水出し緑茶を」
「私はあんみつにしますー♪　彩り鮮やかで見た目も楽しめますよね♪」
ちなみに、『向日葵』では『クリームあんみつ』がアイス有り、『あんみつ』はアイスなしでおおまかにわかれている。

「んー♪　さっぱりした甘さで美味しいです♪」
「こちらの焼き菓子も、香ばしくて……いいですね、これは」
運ばれてきたあんみつに舌鼓を打ちながら、二人はお喋りに花を咲かせる。
「夏休みも半分が過ぎてしまいましたが、どう過ごしたりしてます？」
愛犬のメルを毎朝散歩につれていくのを、優芽は夏休み中の日課にしているのだとか。
「朝の空気が気持ちよくて。夏でも早朝だと、涼しいんですよね～」
「わかります、それ」
「あ、あとグループの集会なんかにも行ったり……」
「グループ？　何か、活動をされてるんですか？」
小首を傾げる智慧に、優芽はハッとなりパタパタと手を振る。ろくろを回すかの如く。
「いえいえ何でもありませんっ！」
グループはグループでも、レディースグループ。
――とは、そうおいそれとは口にできなかった。
「私は……そうそう、寮の近くに作った菜園が、ようやく収穫にこぎつけたんです」
満足そうに微笑む智慧。
「そうなんですか！　それはおめでとうございます！」
きちんと収穫できるところまで、野菜を育てる。
やったことはなく漠然とでも、決してそれが簡単なことではないのはわかる。
「もう少し実ったら、金剛さんにもお裾分け出来ますよ」
「わっ、ありがとうございます！」
「日頃学校でお世話になっていますし、今日もこうして誘ってもらいましたから」
「そんな、こちらこそですよー。……あ、そういえばこうやって一緒に遊ぶのも、七夕祭り以来ですかね～？」
人差し指を口元にやり、ちょっと遠く見るようにしてあの日のことを思い出す。
こちらから誘ったのに遅刻をしたり、無事合流出来たと思ったら見知らぬ男子が傍に居たり――
「……あの時ご一緒した廻さんは、元気にしているでしょうか？」
その名前に、智慧はそういえばと手を打った。
「その廻さんと水族館に行ったのでした」
「え？　水族館に行ったんです！？」
女子と男子が、二人で水族館。
（そ、それってデ、デートなんでしょうかぁ～？　お二人はもうそんな仲に～？）
思わぬ報告に、優芽の頭の中でそんな疑問がぐるぐると。ついでにお目目も心なしかぐるぐる。
智慧は逆に、優芽の驚き様に少し考え込む。
あまり異性として意識はしていなかったのだけどれど、考えてみれば男子と二人で外出は初めてだった。
（……ふむ）
だからと言って、まだどうこうというわけではないのだけれど、うん。