TOP！～Men's Valentine's Day～｜リアクション

TOP！～Men's Valentine's Day～

　カラフルでお上品でお洒落で、甘ったるい。
　そんな店内で服を眺めながら、横嶋下心は今日も妄想を繰り広げる。
（……うーん、この服なら、巴ちゃん、似合うかな）
　もとい、愛しい恋人への贈り物を吟味していた。
　そして今、下心が見据えるのはシャープな印象の黒のワンピース。
（いや、やっぱり、こっちかな）
　次に手を取ったのは、清楚で混じりけのない白のワンピース。品のいいＡラインでスタイルがよく見えるが、下品になり過ぎない、可愛らしいデザインのものだった。
　なんにしても彼はパンツには目も向けない。
（巴ちゃんの制服姿は結構決まっているからスカートが良いんだよね）
　そして悩んだ結果。
（普段とのギャップがあった方が良いよね……）
「……うん、やっぱりこっちだ！」
　白のワンピースをカゴに入れ、それからそのワンピースに合わせて、可愛いダスティパステルの――ピンクのカーディガンを手に取った。
　あとは小物だ。
　ボーイッシュなものや、挑戦的なものは避けて、トラディショナルに、ガーリーに。
　そうして下心は鍔広の帽子と小さめのハンドバッグを選び、仕上げに靴も『ヒールっぽい』ものを選んだ。
　もともと背が高くスタイルのいい彼女だ。ヒールは高すぎず、だからといって低すぎないものが良い。
「これで……うんイイ、凄く良いじゃないか！」
　うんうんと下心は頷いて、満足気にレジに向かう。
（巴ちゃんは、普段は悪っぽくツンツンしているけど、ちゃんとした服着たら美人さんなんだよね）
　主観的な美人さんではなく、誰もが認める美人だ、と下心は踏んでいた。だが、普段は、昔懐かし『スケバン』を思わせるようなくるぶしだけのスカートを履いている上に凄みを効かせている。周りはどうしたって制服の奥、目つきの奥にある美貌に気がついてはくれない。
　そんなことを下心が見過ごせるはずがなかった。
（だから俺から巴ちゃんに洋服をプレゼントして、巴ちゃんの可愛さを皆に分かってもらうんだ！）
　そして下心は会計を終えた。
　さぁ、あとは――

（勿論、下着にもこだわらないとね！）
　ということで、同じホテルの中にある『ａｔｔｉｔｕｄｅ～ｐｅｔｉｔ～』へ下心は向かう。
（服は可愛らしさを全面に押し出した物にしたから……）
　店内のサンプル品を眺めながら、下心は脳内の彼女に服を着せていく。
（ウン、下着は綺麗な感じでいこう）
　方向性が決まったところで、イメージに近い下着を手に取っていく。
「……うーん」
　ツヤツヤとした手触りのもの、サラサラとした手触りのもの、レースもシンプルなものから、繊細なものまで。
　そのすべてを脳内の彼女の肌に重ねあわせて――そして下心は白い凝ったレースの下着を選んだ。
　それが一番イイと思ったから！
　こうしてデザインが決まったので、下心は店員に声を掛ける。
「あの、このデザインでお願いしたいんですけど。はい、彼女に……え、サイズ？」
　サイズと聞かれ、下心はふふふ、と不敵な笑みを浮かべる。
「お任せ下さい、以前巴ちゃんのおっぱいに顔を埋めたのでサイズはバッチリです！」
　言い切った時、店員は言葉を失った。
　が、笑顔のままかしこまりましたと頭を下げ、細かい内容を決めていく。
　その結果のお値段は、割引を合わせてもそれなりのもの。
　高校生の下心には痛い出費だった。
「ふふっ、大奮発さ」
　だが。
　だが！
「……これで可愛い巴ちゃんが見られるなら惜しくないよ！」
　下心は言い切る。