ドラゴン喚ぼうぜ！【蛤】｜リアクション

ドラゴン喚ぼうぜ！【蛤】

　　【仮面児童'sの悪戯は】
　
　「ここどこ……？　知らない人達ばっかり」
　巻き込まれた人が一斉に飛ばされた世界で、寝子高２年生だけで構成された部活Carnevaleの活動中に飛ばされた、霧谷朧は困惑を隠せなかった。
　飛ばされた直後に、白沢先生のろっこん直撃。
　小学校１年生位まで若返ってしまった彼には、状況の把握どころか、想像すらもままならない。

　部活では仮面を被り普段とは別名を付け別人として過ごす。サイズまで丁度良くなってしまった三日月のお面と、服装は制服ではなく袖無しポンチョ。
　他にも飛ばされた人が多数いるようだが、皆小学校１年生の彼には知らない人だらけ。

　「あ、あの子だけぼくと同じでお面被ってる」
　思わず呟くと、相手もこちらに気づいたのか小走りで駆け寄ってくた。
　「君も仮面を被っているね。なら、僕たちはきっと仲間なんだ」
　「仲間……」
　その言葉は余りにも唐突でありながら。しかし、そう言われると朧は知らない人だらけの間に、何だかとても安心をした。
　「僕の名前はパンタ……忘れた。パンタでいいよ」
　恐らくはかなり有名そうな高級感あふれる私立学校の制服を着て、しかしながら、朧と同じく仮面越しであっても分かる少し嬉しそうな笑顔は隠さない。
　その正体は、同じく幼児化した神嶋征一郎。
　高校２年生の征一郎を知っている人には、恐らく想像も出来ないであろう幼い彼が、看板と海の方の両方を交互に見ながら朧の袖を引っ張った。

　「これはすごい…キングはまぐり？」
　その目の先には巨大ハマグリを。
　次には、看板と『何故か』用意されている豪華なバーベキューセット。
　その揃いは多く、ほぼ台所に近い。
　むしろ常識外れにシンクまで用意されたそれは、完全に台所と言っても差し支えがない。

　「これ食べられるんだ、美味しそう。
　なら狙うのは一つだよ。
　君、こんな大きなはまぐりを見た事はある？
　僕は初めて見た。
　ねぇ僕と協力して、一番美味しい部分を戴いてみないか？」
　存在の高級感はそのままに、興味に目を輝かせて朧を誘う征一郎。
　最初こそ、知らない人だらけで戸惑っていた朧であったが、征一郎といると何故か安心感が湧く。
　根拠こそ無いが全く怖くない。むしろ『何かを一緒にしたい』と思う程に楽しくなってくる。

　「……うんっ！
　でも、あのハマグリ堅そう……」
　朧が思い呟いた先、目に入ったのは高台から上れる巨大な崖だった。
　ふと湧いたひらめきに、こちらも瞳の輝きが隠せない。
　「そうだ、近くの岩転がそうよ！　絵本みたいにあそこから転がして貝殻割るの！」
　「良い案だね。
　そうしよう。ねぇ君の名前は？」
　征一郎に尋ねられ、朧は一瞬考えてから、
　「ウィム！」
　「そうか、それじゃあ行こうか！」
　「うんっ！」
　何となく思いついたCarnevaleでの名前を名乗った朧…ことウィムとパンタと名乗った征一郎は、何の疑いもせずにハマグリの前を通って駆け出した。

　ボフッ

　そんな最中、
　ハマグリが小さく息でもするかのように、僅かに霧を吐き出して、走り出した二人はそれに身を軽く浴びてしまった！

　「わぁっ！　服が溶けたぁ！」
　しかし叫びながら、それでもむしろ、それも楽しいとばかりに駆けていく。
　服は、長ズボンから膝丈上のハーフズボンへ。
　上半身は腰上が溶けて、見事なまでに輝く腹チラ。　
　「わっ」
　そして、砂場に足を取られて転んだ征一郎に朧が立ち上がる為に慌てて手を貸す。
　「パンタ君、膝怪我しちゃってるよ！」
　「このくらい何てことないよ。
　さあ、行こう」
　こうして再び元気に走りだす二人組。

　膝上短パン、駆ける都度になびく腹チラ、更に膝には軽い擦り傷を。
　そんなショタ心にトリプルコンボを食らわせて、ちびっ子二人組は姿を消した。

　……今ならば言える。
　『ショタこそが正義』である。

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