【ネコミケ】萌えろ！２日目の幻想バトルロイヤル！｜リアクション

【ネコミケ】萌えろ！２日目の幻想バトルロイヤル！

<３>

　御剣刀は、相方の桜庭円考案の猫と一緒に遊べるボードゲームを販売するサークルの留守を任されていた。
「まさか、トンデモ本の元締めの寝子島書房が企業ブースで出店してるとは思わなかったな……」
　胡散臭い内容でお馴染みの寝子島書房が２日目限定で参加していることに、御剣は何でもありだなと驚いた。
　そして、かの出版社は相方の桜庭が日々蒐集・愛読しているレーベルなのだ。
「桜庭の寝子島書房への情熱と必死さは凄いよな。でもあれ、実際に役立つのか？」
　御剣はひたすら首を傾げるばかりだ。
　そんな中、降って沸いたように聞こえてくるテオの声。
　御剣は敏感に反応した。
「クローネ！　テメエ、マジでいい加減にしろよ！　許さねえ！」
　怒声を撒き散らす御剣は、思考より身体が先に動く。
　南のブースで騒ぎが起きているのを目撃したからだ。
「桜庭は……まぁ、アイツは１人でも戦えるか。それよりも、収拾付かなくなる前に早く駆け付けないと！」
　速く、誰よりも速く、事態が悪化する前に“加速”して駆け付けないと。
　御剣は無我夢中で人ごみを走り抜けていく。

　一方、寝子島書房のブースで買い物をしていた桜庭は神妙な顔をしていた。
「寝子島書房ブースは良かった。今年は萌え豚に媚びて魔法少女物に走るとはやりますねぇ」
　軽くなった財布の中身に乾いた笑いがこみ上げてくる。
「３冊で諭吉４枚は効いた。数量限定は凄い強気だわー」
　皮肉めいた口振りで桜庭はお目当ての限定本を入手できた実感に浸る。
『クルミ割り魔法少女チャイコフスキー戦国退魔編』
『小学生からの奇跡と魔法』
『愛と、魔法と料理はズッ友だよ！』
　題名からして胡散臭さがマジキチ1000％オーバーであった。
　と、ここでテオから世界断裂のおしらせ。
「ちょっまっ、心の準備が！」
　自分のブースに帰って戦利品を読み漁ろうとしていた桜庭にとって寝耳に水の状態。
　彼女のいる西のブースから、珍妙な人物が突如出現したかと思えば、手当たり次第光線を放ちまくる！
　その光線に、桜庭も巻き込まれて被弾！
「アバーッ!!」
　桜庭の意識が遠のいていった……。

　灯斗南は動揺を隠せない。
　世界が切り離された、と脳内で声が響いたかと思えば、遠巻きで眺めていたヒーローの姿をしたコスプレイヤーが喧嘩を始めたのだ。
　更に同人誌からも戦隊ヒーローたちが無尽蔵に湧き出て、現実世界で乱闘する有様だ。
「何がどうなってるんだ？」
　はじめは戸惑いが先行していたが、あとから怒りの感情がマグマのように吹き上がってきた。
「あいつら、ヒーローの姿してるくせに周囲を省みないのか？　そんなの怪人と一緒だ」
　よくよく見れば、中には灯が敬愛してやまない特撮ヒーロー、「マスカレイダー」の歴代マスカレイダーが一般人などお構いなしに殴り合っていた。
　口々に「俺が最強だ！」と言っているのも聞こえる。
　灯は携帯している白い仮面を被った。