運に見放されたあいつ｜リアクション

運に見放されたあいつ

「あら……」
　宮祀の声に皆がその視線の先を見る。
「どわっ」
　奇怪な大和の声とずっこける一同。
「へるぷみ～」
　少女は檻の中にいた。
「なんでそんな所に入っちゃったんだ」
　普段は冷静な旅鴉も思わず頭を抱える。
「みなさんあれ！」
　そこに宮祀が何かに気付いて指差す。
　少女がいる檻の中にはクマもいた。
「おい、早く出て来い」
　クマを刺激しないように小声で少女に言う八神。
　しかし、
「へるぷみ～」
　少女は呑気な声をあげながら檻を揺らすだけ。
「お前の不思議な力を使えば、そこから出られるだろ」
　他の班への連絡を終えた八神が吐き捨てる。
「おお」
　初めて気付いたように手のひらをポンと叩いて、檻の中からみんなの前へと移動する少女。
「なんでまたクマの檻に……」
　大和も怒りを忘れて呆れ顔で尋ねるが、やはり少女は答えてくれない。
「それよりも盗んだ物を返してもらわないと」
「あ、そっか」
　宮祀に指摘されて気付く。
「おい！　盗んだ俺の時計を……」
　少女はすでに遠くへ走って逃げていた。
「あーっ、待てえ！」

　少し行ったところで少女が転んでいるのを発見する。
　その先にはザ・ストレイトの姿。
「お前が捕まえたのか？」
「いや、俺が来た時にはここに転んでいたぞ」
「ドジすぎる」
　旅鴉が辛辣な言葉を投げかけると、少女がゆっくり立ち上がった。
　自分が挟まれた状態にいる事を確認し、ザ・ストレイトの背後へと瞬間移動する。
「逃がすかぁ！」
　我を忘れた大和が少女へと掴みかかる。
「しつこい」
　小さく呟いた少女が、向かって来た大和に掌を差し出す。
「柿内、何かあるぞ！　気をつけろ！」
　八神が叫ぶが大和は構うことなく突っ込んだ。
　ところが……、
「ぐへっ」
　少女の掌が触れた瞬間、大和の頭に大きな木の枝が落ちてきた。
「みんな、うかつに近付くな。何をしてくるかわからないぞ」
　八神達が動けない中、旅鴉が少女へと近づく。
「そろそろ理由くらい教えてくれてもいいだろう」
「……」
「いつまでも黙って困らせるんじゃない。ここまで付き合ったんだ。怒らないから言ってみろ」