故郷での夏休み｜リアクション

故郷での夏休み

●花札と浴衣と打ち上げ花火

　譲達が風呂から上がると、親戚達が花札で盛り上がっていた。
「随分と盛り上がってるなー。その割に真剣なようだけど」
　何事だ？　と蔵人が紫蓮に訊ねると「家族対抗花札大会やってるのよ。勝ったら賞金も出すって！」と言った。
　それで、皆、真剣にやっているのかと納得。スポンサーは、花札大会をやろうと言い出した祖母だ。
「賞金が出るのか、いいねえ。私もやろうかな」
「やろう！　人数合わせもあるし。譲にいさんと更さんは一緒のチームね。叔父さんは私と組もう」
「お風呂に入る前は負け続けだったから、今度こそ勝つわよ！」
　まだよく理解できていないが、参加するからには勝つと意気込む更は、譲と組んで蔵人、紫蓮ペアと勝負することに。

　ルールや出来役はまだわからないところもあるが、だいたいの遊び方がわかれば何とかなる。
　何度かやっているうちに、更は次第にのめり込んでいった。
「こいこい！」
　大きな役が期待できそうなので、熱くなり大声で言い続ける更の役は……

「ご、五光ー！？」

　譲、蔵人、紫蓮はまさかの出来役にビックリ！
「皆、どうして驚くの？　これ、すごいの？」
「更さん、これはすごい役なんだよ！」
　譲が言うには、松に鶴、桜に幕、芒に月、桐に鳳凰、柳に小野道風の５枚の役は、最も点数が高い出来役とのこと。
　花札歴数時間の更がいきなり高得点を出したので、周りの親戚一同もビックリ！
　家族対抗花札大会の結果は、高得点の出来役の更の優勝で幕を閉じた。
「すごいわね、更さん。はい、賞金。受け取ってちょうだい」
　主催者である譲の祖母から金一封を受け取った更は、耳元でこっそりこう言われた。

『今度来る時は、本当の彼女さんになってちょうだいね』

　どうやら、祖母にはすべてお見通しだったようだ。
「ばあちゃんに何を言われたの？」
　気になった譲が聞く。
「さすがは譲君の彼女さんね、やるじゃない、って言われたのよ」
　本当のことは、更と譲の祖母だけの秘密。

　帰省最終日。
　譲は白地に桜の浴衣姿の更、朝顔柄の浴衣姿の紫蓮。
　甚平姿の翔太と花火柄の浴衣姿の佐奈を連れ、地元名物の花火大会へ。
　大勢だと暑苦しくなるからゆっくり酒が飲めない、というのが、のんべえなおじさん連中の意見だった。
「大曲の花火大会って有名なんだけど、タイミングが悪いから見れないわね」
　大曲の花火は例年８月の第４土曜日に開催されるので、残念ながら、帰省中に見ることはできない。

　残念がる紫蓮に、ここの花火も十分楽しめるぞとカメラを構えながら言う譲は、記念にと写真撮影。
　何から何まで貸してもらったり、着せてもらったりなので、更は何だか申し訳ない気分に。
「……浴衣、似合ってるかな？」
「良く似合ってるし、綺麗だよ」
「譲君……その、ありがと。今回のこと、迷惑だなんて思ってないわ。むしろ楽しんじゃったくらいよ。素敵な故郷ね」
　夜空に打ち上げられた花火は、大きな音を立てては輝いていた。
　打ち上げ音が消える様子に魅入っている譲を見て、更は「また来年も一緒に行きたいな……」と小さく呟く。
　その言葉は、花火の音に掻き消されたので譲には届いていない。
（ありがとう、譲君……）

　花火大会の帰りは、露店でおじさん達のお土産を買ったり、食べ物を買ったり。