故郷での夏休み｜リアクション

故郷での夏休み

●帰省前

「あかりだけお留守番とか寂しいの！　なぎちーせんぱいについていくの！」
　音海なぎさが北海道の実家に帰ると聞くなり、橘明里は、自分も行くと言う。
　補習も追試も終わり、夏休みをなぎさと一緒に過ごすと決めた矢先の話だった。
「移動費はいつか払うから、あかりも連れて行って欲しいのなの！」
　仕方ない、と、あかりを連れて行くことに。交通費は、あかりが「必ず返すから！」と言うので立て替え。
「……わかった。あかりんを置いて行けるわけないじゃないか。一緒に行こう」
「なぎちーせんぱい、ありがとー！」

　ドライブインでの勤務を終え帰宅した鉄衛守は、自宅の固定電話に留守電メッセージが入っていたので用件を聞く。
　メッセージの主は、自分と妹を引き取ってくれた、とある会社の社長。
　内容は、話したいことがあるから会社がある東北に戻ってこい、というものだった。
（社長直々の呼び出しとあらば、断るわけにはいかん）
　話とは、社長に命令で密かに護衛している娘のことだろう。娘は今、寝子島で暮らしている。
　そのことを社長に問うべく、衛守は東北に向かう準備を。

「更さん、バイト手伝って欲しいんだけどいいかな？」
　諸星譲にそう頼まれた伊陸更は、どうせ夏休みは暇だし、勉強がてらついて行くとＯＫ。
（田舎なら、風景画を描きたいわね）

「士くんは夏休みに帰省するの？」
　桃原空音に訊ねられた邪衣士は、春に一度、里尾帰りした時「もう二度と帰らん」と言ったから帰る気はないと答えた。
「帰らないんだったら、あたしの実家に来て原稿の手伝いしてくれないかなぁ？」
「原稿の手伝い？　まぁいいが……て、え？」
　実家、という言葉にマジで？　と言いそうになった士だった。

「そろそろお盆だから、実家に顔出したほうがいいのかしら？」
　自宅で会社の休日カレンダーを見ながら、真辺敬子は、そのことを母にメールを送る。
『伸幸と一緒に、祖母の家に直接向かえない？』
　という返信が。どうやら今年のお盆は、両親は父方の祖母の家に向かうらしい。
「それなら、こっちの方がここから近いし、私の車で向かうとしますか」
　自分の車で向かうと了承の返信後、両親の『待ってる』という早い返事が。
「そうと決まれば話は早いわね」
　カレンダーを見て、会社のお盆休みに合わせて２泊３日の帰省をすることに。
「ノブにメールも送って、と。アイツもお盆には実家に顔出すと言っていたし、大丈夫だろう。多分」
　送信し終えた敬子は、手土産を用意したほうがいいのか、と考え始めた。
「メールだ。誰だろ？」
　真辺伸幸の元に、姉から『今年のお盆は、文ばーちゃんの家に行くから準備しろ』という内容のメールが。
　メールを更にスクロールすると、帰省日時、待ち合わせの時間が書かれていた。
「あれやあ、それなら準備しないとだねぇ。ねーさんの車で行くんだったら、交通費タダだねぇ」

　青島椿は、添木牡丹と電話で会話をしていた。
「本当によろしいのですか？　のばら様」
　のばら、というのは牡丹の本当の名だ。
　椿と会話している牡丹は、彼女の双子の妹、添木、いや、花村のばら。
　姉である牡丹は死亡し、悪霊と化して妹に憑依している。
「因縁にケリをつけるためですから」
「……わかりました。遠慮なく、何でもお申し付けください」
「ありがとう」
　添木家には、牡丹が言う因縁の他に、解かれるべき謎など色々と複雑な事情が。
　椿は、そんな中、牡丹と鬼崎あやめが暫定的にでも仲直りできるようにしたいと思っている。
　突如、添木組から支払いを命じられた５０００万円の借金。
　そのために事故死に見せかけ、自殺させられたあやめの父と母。そして、姉であるのばら。
　牡丹とあやめには、添木家以上の複雑な事情があった。
（千唐様の最後の頼みでしたからね……。この青島、最後まで見届けさせていただきます）
　ふたりの仲直りは、牡丹の弟、添木千唐の遺言でもあった。
（……チカ君との約束だもの……私達の人生を滅茶苦茶にした元凶……父様と決別します）