故郷での夏休み｜リアクション

故郷での夏休み

●俺の彼女を紹介します

　寝子島から電車と新幹線を乗り継ぐこと約３時間。
　譲と更、新幹線で乗り合わせた蔵人と紫蓮は無事、秋田に着いた。
「あ、ひいおばあちゃんの家、見えてきた。物置になってるバスが目印なのよね」
　一番乗り、駆け出した紫蓮に、犬が駆けつけるなりじゃれつく。
「ポチ、元気してた？」
　ワン！　と鳴き、尻尾を振って出迎えてくれたポチは元気そうだ。
「いやー、いつ見ても秋田のばあちゃんの家は大きいなー！」
　譲の祖母宅は外観が大きいので、中も広いと思われる。
「更さん、さ、入って」
　譲に案内され、更は、祖母の家にお邪魔する。

「広い家ね。部屋も広いし。大家族が住んでいそうなカンジだわ」
　部屋の数は旅館経営できるくらいに多く、仏間と間続きの和室はかなり広い。
　天井には太い梁があるので、築年数は１００年以上経っているだろう。
「随分と広いのね。空気もいいじゃない」
　こういった田舎で譲と過ごすのも悪くない。更は、これからのことが楽しみになって来た。

　先に来ている親戚に会う前に、大勢の親戚の中にいる祖母に挨拶を。
「おーす、ばーちゃん。元気してた？　久しぶり」
「ひいおばあちゃん、久しぶり」
「ああ、元気だよ。蔵人も紫蓮も元気そうだねぇ」
　譲と蔵人の祖母は、優しい印象の着物姿の老女だった。
「ばあちゃん、俺の彼女を紹介するよ。伊陸更さんだよ」
　とりあえず、話の流れに合わせてご挨拶すればいいのかしら？　と少し緊張して挨拶をする更。
「はじめまして、伊陸更といいます。よろしくお願いします」
　緊張してるの？　の譲が小声で言うので「き、緊張なんてしてないんだから！」と思わず口にしてしまった。
「緊張しなくてもいいのよ、更さん。孫の譲のこと、よろしくね。遠いところから良く来てくれたわね」
「こ、こちらこそ……」

　曾祖母に挨拶を済ませた紫蓮は、別室にいる両親や親戚達と話をしていた。
「お父さん、お母さん、久しぶり。会うのは寝子高の入学式以来？　おじいちゃんもおばあちゃんも久しぶり」
　紫蓮の元気そうな姿に、目を細め、安心する両親と祖父母。
「向こうの寮生活は楽しいか？」
　父にそう訊ねられたので「うん、寮生活は大変なこともあるけど楽しいよ」と答えた。
「寮生活もだけど、寝子高での行事や寝子島の出来事も楽しいよ」
　そう付け加えると、興味を持った親戚がもっと話を聞かせてくれと言い出す。

　夕飯時。食事の前に、蔵人が立ち上がって更に親戚一同を紹介する。
「親戚の皆を紹介するよ。あそこにいるのが、ばーちゃんのミツ」
　主が座る席にいるミツは、ニコリと笑い「よろしくね」と一言。
「で、あそこにいるのは長男のタローおじさんとその奥さん」
　紫蓮の祖父母にあたる人物だ。
「で、奥さんの隣にいるのはタローおじさん夫婦の娘のりっちゃんとその旦那さん。その子供の翔太は１０歳、妹の佐奈が６歳ね」
　壁を背に座っている親戚の次に紹介するのは、縁側の近くに座っている親戚紹介。
「奥に座っているのはうちの両親で、こっちが私の姉夫婦。で、その娘の紫蓮。んで、私」

　よろしくね、と笑顔で自己紹介終了。
「譲は一番下の妹の子の息子で、隣に座っているのが更さんだよ」
　言い忘れてた、と蔵人は笑って誤魔化し慌てて追加。
　譲を除けば、総勢１３人の親戚一同。
（すごく親戚が多いのね……。なんか、こういうアニメがあったような気が……）
　親戚の多さに更が戸惑っているのに気付いた譲は、立ち上がってこう言った。
「みんな、俺の彼女、美人でしょ？」
　胸を張って自慢するので、皆が本気にしたらどうするのよ！　と更は焦った。