故郷での夏休み｜リアクション

故郷での夏休み

●ハッピーバースデー！

　荒太郎の家に着いた雪見大福は、相変わらずの居心地の良さにホッとした。
「お久しぶりです、お邪魔します」
「いらっしゃい、大福くん。ゆっくりしていってね」
　挨拶が終わると、雪奈、曳奈、楓香の順でお出迎え。
「雪奈、曳奈、楓香、久しぶり。元気だったか？」
　しばらく見ないうちに、荒太郎の妹達は大きくなっていた。
　そんな妹達の頭をポンポンしようとした時、おっとりしているがバレー部エースの雨崎荒太郎の２番目の妹、穂香が部活から帰って来た。
「お帰り兄さん、ハルくん！」
　帰宅早々、ふたりにハグする穂香。
「うわっ！？　ちょ、穂香！？」
　いきなりのハグに大慌てな大福を見て「ハルくん可愛い」とうっとりな目で見る楓香。
　ずるい！　と雪奈と曳奈も負けじとハグを。
　姉より発育（特に身長と胸）が良い穂香は、くせ毛を矯正していた。
「イメチェン？」
　荒太郎の質問に「そうだけど？」とあっさり答える穂香だった

（そういえば俺、なんでコータローの家に呼ばれたんだろう？）
　誘いに応じてお邪魔したのはいいが、なぜ呼ばれたのか未だにわからない大福だった。

　夜。荒太郎の母と妹達が、雨崎家お祝い事恒例の手巻き寿司の準備を。
　テーブルには、酢飯、海苔、たくさんの具が盛り付けられた皿が置かれていた。なぜか、中央にはバースデーケーキも。
「大福、お誕生日おめでとう！」
「ハッピーバースデー、ハルくん！」
　荒太郎と妹達がクラッカーを鳴らし、お祝いしてくれた。
「そういえば……今日は俺の誕生日だったな。こういうのは、くすぐったいような、照れるような……」

　照れ臭いので、大福は「ありがとう」と言うのが精いっぱいだった。
「大福くん、蝋燭の火フーッってする？」
　荒太郎の母がそう言うので、せっかく皆が誕生日を祝ってくれたので、恥ずかしかったがすることに。
　蝋燭が大福の年齢の数だけ無理矢理立てられたので、バースデーケーキが崩れてしまったハプニングは良い思い出に。

　皆で楽しく手巻き寿司とケーキ食べながら大福の誕生日パーティーをした後は、アルバム見ることに。
「大福も、この頃は可愛かったねぇ」
「そういうコータローはあまり変わってないな」
　顔を合わせ、クスりと笑いあうふたり。
「荒太郎、ハルくん、花火をしよう」
「いいね。兄さん、ハルくん、やろうよ」
「「やろうよー！」」
　楓香が花火をしようと言い出すと、それに続き、穂香、雪奈、曳奈もやろうと誘い出す。
「いいねぇ。やろうよ、大福」
「ああ」

　花火をしていると、楓香と穂香は大福をはさみ恋バナを始めた。
「ハルくん、彼女できたの？」
「ばっ……い、いねーよ！」
　好きな人がいるのかと聞かれても、これしか答えられない。
（こいつらも恋愛とかに興味が出てきたのかな？）
　参考にならないことが不甲斐ないと思うと、大福はちょっとだけ情けなくなった。
「線香花火、きれいだな～」
　皆で花火をしている写真を携帯カメラで撮ろうとした時、携帯に彼女とのプリクラが貼られているのに雪奈が気付いた。

「誰、この可愛い子！　兄ちゃんの彼女？　ありえない！」
「え？　彼女？
　下の妹２人は、荒太郎の彼女に興味津々。
　雪奈が携帯を横取りすると「兄ちゃんに彼女ができたー！」と皆に知らせた。
「こら、取るな～っ！　って、何？　なんで睨むの！？」
　それを聞いた穂香以外の妹達は、寄ってたかって荒太郎を袋叩きに。
「痛い痛いっ！」
「仲良しねえ」
　こういうのは仲良しと言わないんじゃない？　と穂香が突っ込むが、微笑ましく見ている母には通じず。
　オホホと笑う母達につられたのか、雨崎家で飼っている犬が吠え始めた。
「ご近所迷惑だから駄目よ？」
　母にたしなめられ、吠えるのをやめた飼い犬だった。