故郷での夏休み｜リアクション

故郷での夏休み

●水入らずの夜

　恵御納夏朝の帰省３日目。
　明日の夜には帰り支度をするので、家族揃ってゆっくり過ごせるのは今夜が最後になる。

　理沙が腕によりをかけて作ってくれた夕飯を食べ終えると、家族水入らずの会話の時間に。
「明後日には、夏朝ちゃん帰っちゃう……寂しいわ～」
「仕方ないだろう。４泊５日の帰省と決めていたんだから」
　相槌を打ちながら、久隆も寂しがる。
「また帰って来るんだから、その時は皆でゆっくり過ごそう。夏朝、どこも一緒に行けなくてすまなかったな」
「仕方ないよ……お仕事なんだから。今度帰って来た時、お休みが取れたら……皆で、どこかに行こう」
寂しがる理沙には、また帰ってくるから、それまで我慢してと言った。
　どっちが母親でどっちが娘かわからないな、と久隆は苦笑する。
「今日……久々にこの近くを歩いてみたんだ。中学の時の通学路とか」
　中学時代の友達には会えなかったが、風景は相変わらず和やかで静かだった。
「通学していた中学の頃……懐かしくなってきたな」

　しんみりした雰囲気を変えるべく、理沙は、夏朝に寝子高での生活や寝子島での暮らしぶりを訊ねた。
「夏朝ちゃん、寝子島ではどんなことがあったの？」
「私も聞きたいな。聞かせてくれるかい？」
「うん、そうだね……」
　両親を心配させたくないので、寝子島での出来事は、ろっこんや神魂、怪人セブンのことは秘密に。
「いろいろあって、楽しいよ。理事長先生が色んなイベント思いついたり……ビーチで砂遊びしたり泳いだりしたし……」
　神魂騒動や学校生以外だとやっぱりこれ！　と最後にこう言った。
「猫さん達と一緒に過ごせる時間が多くて、とっても嬉しいんだ！」
「夏朝は、本当に猫が好きなんだな」
　様々な体験をしていることを嬉しく思い、寝子島に興味を持つ久隆は、夏朝は寝子島での生活を楽しく過ごし、無事でいることに安心した。

　両親は、ここでの生活をうまくやっているようだ。
「楽しく過ごしているのね。私と旦那様は、ここでのんびり過ごしてるわ」
　最近、理沙は近所の農作業を手伝っているのだとか。
「お母さん……農作業しているんだ」
「そうよ。農作業を手伝うのが好きでね……」
「ミミズや毛虫を怖がっているけどね」
「旦那様の意地悪～」
　バラされたくないことを言う久隆をポカポカ叩く理沙を見て、夏朝は、両親も元気にやっていることに安心する。
「そうだわ、今度ご近所さんからおすそ分けもらったら、夏朝ちゃんに送るわね！」
　帰省した次の日の朝に食卓に並んでいた酢の物に入ったいたキュウリは、手伝ってくれたお礼にとおすそ分けしてもらったものを使ったのだった。
「うん……おすそ分け、楽しみにしてるね」
　量が多かったら、寝子高の友達に分けられるかな？　そう思うと、送られてくる日が楽しみになった。
　いつになるかはわからないが、理沙はきっと、たくさんの野菜を送るだろう。

　午後１０時を過ぎた頃、早寝早起きタイプの理沙が眠たくなってきた。
「ごめんなさい……おねむの時間だわ。もっと夏朝ちゃんや旦那様とお話ししたい～……」
　起きていようと頑張るが、遅い来る睡魔に勝てず。
「もうこんな時間か。理沙が限界だ。もう少し、夏朝の話を聞きたかったんだが……」
「仕方ないよ……」
　眠ってしまった理沙を抱きかかえ、久隆は夫婦の寝室へ。
「今日は……もう寝ようか。おやすみ、夏朝」
「おやすみ、夏朝ちゃん。また明……」
　また明日ね～と言いたかったが、言い終える前に理沙は眠ってしまった。
「うん……おやすみなさい、お父さん、お母さん。また、明日」