故郷での夏休み｜リアクション

故郷での夏休み

●どこでも相変わらず

「……ただいまー」
「たっだいまー！　もー、おなかぺっこぺこぉ☆」
　実家に着いたのが夕飯時ということもあり、志波拓郎、志波武道は空腹状態。
「……なんか、いつにも、増して、疲れたが……おなか、すいた……」
　理由は旅の疲れもあるが、最大の原因は「かーさん、ごはーん！」と夕飯を食べたがっている兄に振り回されたためだった。
「そろそろ帰ってくる頃だろうと思ってたから、早めに用意したよ。さ、上がって」
「さっすが、かーさん！　たー坊、早く食おう！」
「……ああ」

　息子達がたくさん食べるだろうと思い、母は、いつもより多めにご飯を炊き、おかずの量を増やしていた。　
（お袋の作る料理……久々で、美味しい……）
　ゆっくり味わう拓郎に対し、武道は「かーさんのごはん、おいしー☆」と大喜びしながらパクついている。
　久々の母の手料理だったので、拓郎は食べ過ぎた。
（ご飯、食べたら……、親父に、成績表を見せなきゃ、だよ……な……）

　夕飯を済ませ、満腹状態なままの志波拓郎は、緊張しながら、おそるおそる父に成績表を手渡す。
（反応自体は、悪く、ない……かな？）

　無言で見ているので、後で、何を言われるのかわからないのが怖い。
　隅々までじっくり見た父は「苦手分野を頑張れ」とだけ言った。
　他に何か言われるかと気が気でなかったが拓郎だったが、それ以上何も言われなかったのでホッとした。
（よかった……）
　心配は取り越し苦労だった。

「とーさん、俺の成績表を見てくれ！」
　夕飯を腹いっぱい食べ終えた志波武道は、競輪ニュースを見ている父に成績表をバシュッ！　と差し出す。
「どれ」
　拓郎の時とは対照的に、さっと見るだけの父。
「成績は心配ないな、成績は」
「なにその言い方ー。まぁ、いっか」
　気になる言い回しだったが、言われた本人は、あまり気にしていないご様子。

　武道が父に成績を見せ終ると同時に、マナーモードにしていたズボンのポケットに入れていた拓郎のスマホが振動した。
「……誰だ……？」
　送信したのは高梨彩葉だった。
（あれ？　彩葉さんからメール。そういえば、彩葉さんも帰省してたんだっけか）
　両親、特に武道に見られたくないので、部屋の隅に移動し、彩葉が送信したメールをこっそりと見る。
（フォオ！？　可愛い……かわいい……！　抱えてる豆柴もすっごくかわいい！　何よりも部屋着！　キャミな彩葉さんもかわいい……！！）
　メールに添付されている写真を見て、彩葉のキャミ姿と愛犬のマメを見て小さくガッツポーズ。
　コソコソしているが、どことなく楽しげな拓郎に気付いた武道は「なにしてんのー？」と背後から覗き見。
「あるぇ？　たー坊、もしかして彼女からのメールかなー？」
「ち……違う……！」
「えー、今、ちらっと写真見えたけど、可愛いわんこがいたじゃなぁい。俺も見たぁい！　見せて☆」
「なにしてるの？」
　コソコソしている拓郎に声をかける母。
「たー坊の彼女からメール、いやぁん☆　とーさん、かーさん、たー坊に彼女できたんだぜぃ！」
「そうなの？」
　拓郎にも彼女ができたのねぇ、と喜ぶ顔の母に対し、父は無関心。
「あ、いや…なんでも……何でもないって言ってんだろ！　この馬鹿兄貴が！！」
「って、わぁい、たー坊がガチで怒ったぁ！　イヤァン！」
「毎度毎度いじり倒しおってからに！　ふざけんなや、スマホ返せ！！」
「最近いじってなかろーもん。地元でくらい、はっちゃけてもよかろーもん！　そげんか顔しとっと、彼女、怖がってしもーとよー」
　ＨＡＨＡＨＡ☆　と毎度おなじみの笑いで部屋中走り回る武道。
「家に帰ってきてまで俺をからかうな！　馬鹿兄貴！！」
　無視していた父だったが、堪忍袋の緒が切れたのか、すっくと立ち上がるとドタバタ走り回る兄弟の背後に。
　ゴゴゴ……という効果音が聞こえそうなほど、腕組みして立っている父の表情は仁王像のように険しかった。
　背後に一瞬、強面の守護霊のようなものが見えた……のは気のせいだ、多分。

「「……ハッ！？」」

　ふたりは振り向くなり、頭に父の強烈な拳骨を食らった。
「喧嘩両成敗っ！　ったく、寝子島でもそんな感じなのかお前らは……」
　呆れた父は、それ以上何も言わず、新聞に目を通し始めた。
「……兄貴のせい、だからな……」
「たー坊も悪いって！」
　まだ喧嘩しているふたりを、父は無言で睨むのでやめた。

　寝子島にいても、福岡の実家に帰っても、まったく変わらない仲良し（？）な志波兄弟だった。

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故郷での夏休み

シナリオ

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