故郷での夏休み｜リアクション

故郷での夏休み

●破天荒な家族達との１日

「まあ夏休みだし、家族に顔見せに帰らんとね」
　千葉県の実家でゆっくりしたいところだが、まあ無理なんだろーなァ、と思う鳴神楓。
　楓の実家は、さる実戦派空手の流派の道場だ。
　道場に行くなり、挨拶もそこそこに５人の姉にいきなり襲われた。
　姉達は、上からいち姉、にー姉、さん姉、よん姉、アリスと呼んでいる。
　５番目の姉、アリスはアメリカ人の母の血が濃いのか、金髪、ロリ巨乳だ。
「帰るなり、挨拶無しのお出迎えたぁねぇ。で、５対１の勝負か？」
　姉達曰く。これが鳴神家の出迎え方だとか。このような荒い家族のお出迎え方は、空手道場の鳴神家らしい。

「この勝負、俺が勝ったらどうなるんだ？」
　いち姉が「楓が勝ったら、実家でゆっくり休ませる」と言うと、他の姉達もそうだと頷く。
　自分達が勝ったら、楓をこき使うとにー姉が言いだした。
　館長たる父に鍛えられたこともあり姉達は全員空手の達人だが、ひとりずつ相手にするなら、楓のほうが１００倍強い。というのは本人談。
（でもなー、コンビネーションという点においては、姉ちゃんズは超人的だからなー。俺の負けが目に見えてるじゃねぇか）
　５人まとめで相手となると、激戦の末、ギリギリで楓の負けかもしれない。
　ここで逃げては男がすたるぜ！　と、楓は姉達との勝負に挑む。
　勝負の結果はというと……姉達のコンビネーションに翻弄された楓の完敗だった。
「……俺の負けだ。ここにいる間、あんたら全員に付き合うぜ」
　そんなワケで、帰省中は姉達にこき使われる羽目になった楓だった。

・楓のスケジュール

　帰省２日目。いち姉の弾丸ツーリングに連れ回され。
　朝早くから夜までいろいろ走り回ったので、後ろに乗っているだけだが疲れた。
（ライダースーツは暑いしムレる！）

　帰省３日目。にー姉のバンドメンバーとして、昼夜問わず参加させられ。
　ボーカル担当となり、急ピッチで歌詞と振付けを覚える羽目に。
　ライブは成功したので、その苦労は報われた。

　帰省４日目。さん姉のショッピングで、尋常じゃない量の荷物持たされ。
（なんで女は、こんなになっても買い物が好きなんだよ……）
　早く帰りてぇぜ……と思ったが、夕方まで付き合わされヘトヘト。

　帰省５日目。よん姉のネコミケ直前の修羅場に徹夜で付き合わされ。
（ベタや消しゴムかけはともかく、スクリーントーンなんて貼ったことねぇ！）
　慣れない作業に四苦八苦な１日だった。

　帰省６日目。アリスを浦安の某夢の国を自腹で連れて行った。
（なんで俺がこんなことしなきゃなんねぇんだ……）
　アリスと一緒に夢の国の人気者と記念撮影をしたり、アトラクションを楽しんだり、お土産を買わされたり。
　夜のパレードと花火が見たいと言うので、帰りはかなり遅くなってしまった。
（明日は海の国に連れていけだと？　冗談じゃねえ）
　楓の所持金は、交通費を除いてすっからかん。

　結局、楓がゆっくり休めたのは帰省最終日だけだった。
　ぶっちゃけ死ぬほど疲れたが、姉の勝手に付き合わされるのは昔からなので、これはこれで、けっこう楽しかったりする。
　ぐったりしながら横になっていると、ママ寂しかった！　と金髪、ロリ巨乳の母にベタベタされた。
（月１で顔を見せに帰ってるでしょうが……）
　それを見た父に嫉妬され、父子喧嘩勃発。結局、最終日も休めず。
「相変わらず大人げねーなあんたも！　そんなに妻大好きなら、去年ママが実家に帰った時も自分で迎えにいけよなマジで！　照れ屋か！」
　楓の母は、去年、夫婦喧嘩をしてアメリカの実家に帰ったことがある。その時、母を説得し、連れ戻したのは楓だった。
　父との喧嘩は、姉達との勝負とは比べ物にならないほどの超大激戦だった。
　道場にクレーターが出来るレベル……というのは大袈裟だが、父と子の蹴りや突きで、道場の壁や床はボロボロに。

　母と姉達に道場の修理を命じられた楓は、修理が終わるまで寝子島に帰れなかった。