大北海道物産展 in ｍｉａｏ｜リアクション

大北海道物産展 in ｍｉａｏ

「おぉ、これはなんとも旨いのぅ」
　善太郎は酒の試飲に舌鼓をうつ。
「この濃厚な香りと舌を撫でる甘さ、そして喉越しにほんのりと残るぴりりとした辛さ、まさに絶品じゃて」
　ごくごくと飲み干す善太郎を、店員たちと、鮭を咥えた着ぐるみクマの露草が不安そうに見つめる。
「ふむ、こちらの酒はどうじゃ？　……うむうむ、なかなかの味じゃな。そちらは……おっと、あまり飲みすぎてもいかんのぅ」
　店員たちの不安な目線に気づき、善太郎は試飲を止める。
「そうじゃな、そちらの千夜雫と国土無限、それに大地のささやきあたりを頂こうかのう」
　店員たちの不安とは裏腹に、善太郎は少しも酔いを見せることなく、てきぱきと購入していく。
　次の店へと行きかけた善太郎は、ふらっと足をとられた。
　即座に露草が支える。
「おっとっと」
　無論倒れたりはしないが、いかんせん、いつの間にかずいぶんと買い込んでいたようだ。
　気がつけば両手に抱えるほどの酒、酒、酒。
「どこかで休憩されマースか？」
　露草が尋ねるが、善太郎はいやいやと笑顔で断った。
　早めに佳奈と合流したかったからだ。
　酒造コーナーを出ると、改めて己の買った酒の量に恐れおののく。
「これは、婆さんに怒られるかもしれんのう」
　善太郎はほんのり困りつつ、佳奈と待ち合わせるイートインを探し始める。
　miaoに来慣れた若者達ならイートインの場所は馴染み深く、すぐにわかるものなのだが……。
（いーといん、とは、なんなんじゃろうなぁ）
　佳奈に待ち合わせとして頷いたものの、善太郎はそもそもイートインが何なのかをわかっていなかった。
（此のままでは待ち合わせ場所にたどり着けんかも知れぬのう。佳奈がいれば、すぐにわかるんじゃが）
　可愛い孫なら、どんな人混みの中でも一発で見分けられる自信があった。
　と、その時だ。
　可愛いかわいい孫娘の姿が見えた。
　善太郎の視線に気づき、佳奈は元気に手を振った。
（おぉ、どうやらここがいーといんじゃったか）
　ほっとしつつ、佳奈に近づく。
「おじいちゃん、やっぱり迷子になってたでしょ～？」
「なっ、馬鹿を言え、ワシは迷子になどなっとらんっ」
「ほんとかな～？」
「う、うむ。断じて迷子などという不名誉なものにはなっておらん」
　たまたま、偶然、いーといんが迷子になっていただけで、ワシが迷ったわけではないのだ。
「そっかぁ。じゃあ、あたしの勘違いだねぇ。でも、そんなにお酒買って大丈夫なのかなぁ。お婆ちゃんに怒られるんだよ？」
「それなんじゃよなぁ……。ついつい、こう、な？」
　ぽりぽりと頬をかく善太郎に、佳奈は苦笑する。
「いいよ、一緒に謝ってあげる。あたしが誘ったんだしねぇ」
「む？　そんなことはせんでえぇ。ワシはワシで、ちゃんと言い訳を考えておくのじゃ。なぁに、こう見えても婆さんとは長い付き合いじゃからの。それよりも、佳奈も随分購入したみたいじゃし、そろそろ帰らんか？　門限を破るほうが、婆さんはおっかないぞぇ」
「あれ、もうそんなに時間たってたんだねぇ。じゃあ、最後にニャンタオのアイスを買っていくんだよ」
　佳奈と善太郎は、それぞれ両手いっぱいにお土産を買って、さらにニャンタオのアイスを求めて去ってゆく。