大北海道物産展 in ｍｉａｏ｜リアクション

大北海道物産展 in ｍｉａｏ

「いやいやいや、これは北海道名産展じゃないんじゃないか？」
　伊賀解理は、思わず呟く。
　北海道出身の彼女にとって、大北海道物産展は故郷の香りのするイベントだ。
　遠くで、北海道タラバガニのたっくんの着ぐるみと、クマのくーさんが踊っていて、北海道らしさを演出している。
　そしてmiaoといえばマスコットキャラのmiaoで、miaoが元気にかわいく「大北海道物産展ですにゃ～」と呼び込みもしていて微笑ましい。
　だがしかし。
「あれだよあれ、あれがないよ！」
　普段大人しめな口調だというのに、解理は強い口調で否定する。
　彼女が探しているもの。
　それは、赤い缶に白猫が描かれた『ニャラナ』！
　北海道でのみ広まったというこのニャラナは、北海道民には馴染み深い飲み物なのだ。
「そりゃ、本州では湿布臭いとか何とか不評なのは知っていたけれどさ。大北海道物産展でなら飲めると思ったのに……」
　解理はがっくりと肩を落とす。
　本州に来てからというもの、どこのスーパーにもコンビニにも、そしてもちろん自販機にも、ニャラナが売っていた試しがない。
　寝子島で一番大きな駅ビルの大北海道物産展でまでないとなると、もう、お手上げだ。
「あ？」
　傍目にもわかるほどに肩を落とし、トレードマークの白衣が今にも床に触れそうなほど落ち込んでいた解理だが、目の前を移動する鮭を咥えた着ぐるみに目が釘付けになる。
　いや、正確にはその着ぐるみが運ぶワゴンのカゴの中！
「ちょっとまった、それ、ニャラナだよね？！」
　がしっと着ぐるみの肩をつかむと、鼻に引っ掛けた丸眼鏡がずれそうになる。
「あ、ハイ、ソーデース？」
　解理の気迫にたじろぎながら、着ぐるみの中の露草はこくこくと首を縦に振る。
「ぃやったぁああああ！」
　思いっきり、解理はガッツポーズ！
　即、購入。
「やっぱり、これがないと北海道って気がしないね」
　イートインで、思いっきり豪快に飲み干す解理。
　当然、一本といわず、数本購入してある。　
　喉を通り過ぎるスーッとした飲み味は、故郷を感じずにはいられない。
（こんなに美味しいんだけどね。なんで湿布臭いって言われるのか）
　湿布のスースーした感じとは一味違うニャラナなのだが、馴染みがないとどちらも同じように感じるのかもしれない。
「さーて。美味しく飲んだし、あとはニャンタオのアイスと、ラングドシャのホワイトクッキーでも買って帰るか」
　鉄板中の鉄板の二点を挙げて、解理は大北海道物産展に戻っていく。