大北海道物産展 in ｍｉａｏ｜リアクション

大北海道物産展 in ｍｉａｏ

「うっわぁ、ニャンタオのチーズタルトにアイスがあるねぇ！」
　凛は飛びはねる勢いで目を輝かす。
　その両手にはすでに買いまくった北海道の特産品が山ほど。
　買い物袋から飛び出ているのは、タラバガニの足に違いない。
「前から一度食べたかったんだよねぇ。一つと言わず、二つ貰えるかなぁ」
　店員からニャンタオのチーズタルトとアイス二個ずつ受け取ると、凛はいそいそとイートインに向かう。
（せっかくのアイスが溶けちゃたら台無しだもんねぇ）
　クーラーの効いたイートインでは、カップルや親子連れ、学生達であふれている。
「……あれぇ？」
　凛は、どこかで見たことがある人影を目にして、駆け寄った。
「あ、やっぱり、修くんだぁ♪」
　一重まぶたの切れ長が瞳が特徴的な美少年。
　すぐに隣のクラスの八神だとわかった。
「雨寺もここに来てたんだな」
「美味しい物がいっぱい売ってそうだったからねぇ」
「既に沢山購入したみたいだな」
「そうなんだぁ。ニャンタオのアイスが売ってたから、溶けないうちにと思ってねぇ。修くんにも一個上げるねぇ」
「いいのか？　悪いな」
「いいのいいのぉ、だって、思わず二個買っちゃったけど、一個食べ終わるころには溶けちゃうと思うんだぁ」
　凛は笑いながら、修にいま買ったばかりのニャンタオのアイスを一個差し出す。
「そうか、ありがとう。美味しく頂くよ」
　ふわっと微笑んで受け取る修。
　その微笑みは純情な乙女には即死級。
（知り合いに会えるなんてついてるなぁ）
　ちょっとだけ嬉しくなる。
　赤いモノが、足元を蠢いていた。
「え、え、えっ？」
　何が起こったのか、凛はわが目を疑った。
　いつの間にか、買い物袋からはみ出していたタラバガニがいない。
　足元の赤いモノ。
「タラバガニが逃げ出したようだね」
　修が冷静に屈んでタラバガニを捕まえる。
「え、えと、えっとぉ……」
　凛はまだ状況がつかめない。
　いや、タラバガニが逃げだしたのだと理解はしているのだが、現実に思考が追いつかない。
「新鮮なタラバガニはね、こうやってたまに息を吹き返すんだよ。北海道に行ったときにも何度か見かけてる」
「そ、そうゆうものなのねぇ……」
「驚くよね。冷凍されていたカニが動き出すと。流石に、今回みたいに自力で歩けるほど元気なカニは珍しいけれどね」
「う、うん」
「その袋にこのまま入れると、また逃げ出しそうだし、ちょっと待っていて」
　修はにゃんちぐらを椅子に置き、タラバガニを抱えたままどこかにいってしまった。
（この籠みたいなの、なんだろうなぁ？）
　凛が首をかしげていると、修はすぐに戻って来た。
「うん、これで大丈夫だと思うよ」
　修がタラバガニを凛の持つ買い物袋に入れる。
「タラバガニの足を縛ったんだねぇ。北海道だとカニはいっぱい歩いてるのかなぁ」
　まだうにうにと動いているタラバガニの両足は、把捉紐でくるくると縛られていた。
　これなら、歩いて逃げることは出来ないだろう。
「雨寺も北海道に行ってみるといいよ」
「逃げるタラバガニを見にかなぁ？」
「いやいや、まさか。人間の手が触れていない自然の美しさを感じれるから」
「今度学校のみんなで旅行とかしたいねぇ」
「いいね。セスナを用意するよ。散策も楽しいけれど、上空から見下ろす北海道はまた格別だからね」
「うわぁい、楽しみだねぇ。いろいろありがとうございますねぇ。また学校で会ったらよろしくでーす♪」
　るんるんるん。
　鼻歌を歌いながら、凛はmiaoを後にした。　
　