ミッドナイト・フリーキー・ショウ！　～MOCONUと暮らそう｜リアクション

ミッドナイト・フリーキー・ショウ！　～MOCONUと暮らそう

【普堂しおりの場合】

　すりすり。しおりはふかふかの毛に鼻先をもふっと埋めて、ご満悦。
「もふもふ～！　癒される～！」
　しおりの元へやってきたMOCONUは、ちょっぴり変わったカラーリングのようです。滑らかなクリームのような黄色いもふっとボディに、頂上付近からぴんと飛び出した一本の毛の周りだけが、どこか香ばしそうなこげ茶色。
　例えるなら、そう。
「……プリンみたいで、美味しそう♪」
　そんなご主人様のセリフに、確かにプリン色と呼べるカラーのMOCONUは、何だかびくり、身を震わせました。
　えーっと、なになに……しおりがMOCONUを抱いたまま、一緒に届いた説明書へ目を通しますと。
「幸福な記憶をくれるの？　へえ……あ、でも、反動？　があるんだ……」
　しおりは、そこへ書かれた『機能』に、興味を惹かれた様子。
　そう、彼女には、ひとつの夢がありました。
　女の子なら誰しも願ってやまない、かもしれない。ささやかながら、大きな夢が。

「やっぱり、夏はこれだよね～！」
　見渡す限り、滑らかつるつるなカラメルの平原。少しばかり潜れば、そこはとろけるようなプリンの海。ひんやりと冷たい感触に包まれながら、しおりはプリン・プールを満喫します。
　泳げば実に気持ちが良くて、食べれば口いっぱいに広がる甘さ。ちょっぴりビターなカラメルの上、ふんわりホイップクリームの横には、イチゴにチェリー、バナナにキウイにオレンジに。フルーツだって、たくさん乗っているのです。
「涼しいし、美味しいし。もう、最高～！」
　気ままに、優雅に。プリンの上に浮かび、時にはゆるゆると泳ぎ、そしてお腹がいっぱいになるほど、プリンやフルーツを堪能するのです。
　時も忘れて、しおりは心ゆくまで、巨大なプリンアラモードを楽しむのでした。

　そんな夏の楽しい思い出を、MOCONUと一緒にたっぷりと回想した、その夜のこと。蒸し暑さも手伝ってか、しおりは、イヤな夢を見ました。
「う、うーん……何だか、暑いなぁ」
　それは、昼間に飽きるほど満喫したあのプリンの海の、その続きのようにも思えました。
　けれど。爽やかに涼しげなプールに浸かっていながら、何だかちりちり。肌が、焼けるように熱いのです。
「……？　これって……」
　気づけば。彼女は、どこか狭くて暗い部屋の中に入れられています。夢の中とはいえ、あまりに唐突な展開に、戸惑いを隠せないしおり。
　ふと、何だか視線を感じて、背中を振り返ると。
　部屋の壁には横長の大きなガラス窓があって、そこから向こうに見える光景は、しおりも見覚えのある、住み慣れた自分の部屋のようです。
　そして、窓からこちらを、じい……っと覗き込んでいるのは。
「あ、あれ、私のモコヌ……？」
　壁の電熱線が真っ赤に灯る、そこはオーブントースター。窓の外から、巨大なプリン色のMOCONUが、焼きプリンにトッピングされたしおりの焼き加減を、じっくりじっくり、確かめているのでした。
「な、なんで！？　あ、熱っ、やめてよモコヌ、熱……ぎゃーーー！！」

「ぎゃーーー……はっ。ゆ、夢かぁ……」
　自分のうめき声で目を覚ますと、パジャマは汗でぐっしょり。どうやら、悪夢にうなされていたようです。
　ふと手に触れるのは、ほわほわの毛の感触。見れば、小さなプリン色のMOCONUが、心配そう？　に、しおりの顔を覗きこんでおりました。
　夢の中、恐ろしげなあの顔を思い出して、しおりはひとつ苦笑い。MOCONUを抱き寄せると、再び夢の中へ旅立つのでした。
　今度は、良い夢が見れますように。